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リタイアメントホーム
お盆の頃になるとロサンゼルスに在るリタイアメントホームに慰問で訪れたことを思い出す。
立派な建物で、日系人の高齢者がたくさん居住している。
事務員からこのリタイアメントホームの概要を教えていただいた。経営はリタイアされた入居者の拠出金で運営されていて、医者、看護師、調理師などを雇用している。もし死亡された場合、遺産は運営団体に寄付されるそうだ。
我々は、アマチュアの Jazz Band として訪問した。以前は美空ひばりなどもここに慰問に来たそうだ。
ステージ前を広く開けて、ダンスフロアーを設定したところ、みなさん積極的にダンスを楽しんでおられた。
客席に車椅子で参加されている方がいた。彼女はすまなそうに、「私はまだ80代で90歳にもなってないのに車椅子で御免なさい。今日は足の具合が悪いの。」と弁解なさる。
驚いたのはこちらで、「そんなことは構わないで楽しんでくださいね」と返事をした。
ここの住人は独立心が強く、自分に何かできることはないかとサービスすることを常に考えている。
それぞれの個室を個人の特技を生かしたクラブ活動の場として解放している。
裁縫の得意な人は裁縫を教えるクラブを運営し、書道の得意な人は書を教える等仲間同士楽しんでいる。
入居者の一人と仲良くなったところで、余計な質問をしてしまった。「お子さん達とは連絡を取っているんですか?」
「ここはアメリカでしょう、みんなそれぞれ独立しているの」寂しげな顔をしてそう言われたのを聞いて「しまった!」と思ったがもう遅い。
でも日系人として、アメリカで暮らし、いろいろな苦労を重ね、最後まで独立心を失わない先輩たちを間近に見て、感動した。
帰国後、日本の老人ホームへの慰問を何度も試みた。
少し感じた違和感は、入居者は自分から何かしようとする人が少なく、「あの介護士さんはあの人のことばかり面倒を見て、私のことはちっともやってくれない」とか、自分がお世話されることばかり、期待しているように見えた。
流れている音楽に Jazz やロック、クラシックが無くほとんど演歌が主流だ。気分が滅入ってしまう。
集団でお遊戯みたいなことをやっていた。何人も集めて介護の方が「ムース〜んでひーらーいーてー」幼稚園児と同じようなお遊戯をやっている。
隅にいるお年寄りが『ムスッ!』とした顔でそっぽを向いているのが見えた。私もこの扱いを受けたら同じ顔をするだろうなと同情した。