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ホー・チ・ミン廟

開高健氏の著書で、食べ物のおいしい国はどこだろうというテーマで議論が何度もされている。ある著書の中で「ベトナム料理が最高である」と絶賛されていた。コーチシナと呼ばれフランス領であったベトナムは魚食民族の味覚をフランス料理に加味した独特な料理を編み出した。「そもそも食事の美味しい国は、その国独自の麺料理を持っている」という氏の解説は説得力がある。諸国を釣り歩いた氏の紹介は間違いないだろうとハノイへ行った時、色々食べ歩いた。満腹になって一息ついて夜の9時頃、同宿のH氏と「ベトナムのフォーを食べたいね。」と盛り上がり、ホテルの案内に聞いたらレストランは休みだという。外には色々あるらしい。それでは外に行くかと一歩出たらタクシーが待っている。すぐ飛び乗ってしまった。探すのが面倒だったのでタクシーを利用しようという魂胆だ。

乗ったところタクシーの運転手は言葉が全く通じない。日本語はもちろん英語もわからない、ベトナム語だけしか話せないみたい。仕方がないので「フォー、 フォー、We like Pho 」と言ったところ了解してくれたみたい。 どんどん郊外に向かって走り出した。「ホテルの案内では近くにありそうだったのに随分走るな。二人だから変なことはしないだろう」とたかを括っていたら、走る走る、明かりのない山の方へ走っていく。困ったな話しかけても通じないし、30分も走ったかな突然左側前方に暗闇の中にスポットライトの当たった建物が現れた。そこへ向かっていく。近づいてみると物々しい沢山の衛兵が立っている。うすらボンヤリの私でも気がついた。ここはホー・チ・ミンの廟である。運転手の満足そうな顔。「どうだ」と言わんばかり。ホー・チ・ミンは国民に本当に愛されているんだなと感じた。夜なので車を降りることも許可されなかった。立派な建物を車の中から拝見した。

ところで、フォーを食べたいのだがどうしよう、運転手に向かって、左手に丼を持って右手で箸を持ちフォーを食べているジェスチャーをしたところ、にっこり笑って、ホテルのすぐそばのフォーの店に連れて言ってくれた。有名な店らしくクリントン元大統領がフォーを食べている写真が掲示してあった。とても美味しい、おかしな話だった。

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