奇跡
奇跡というものが本当にあることを感じている。
新田次郎に『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』が有り、久しぶりに読み返して見たくなり、本棚を探した。北杜夫の『白きたおやかな峰』はすぐに見つかったが、新田次郎はどこかに紛れ込んでわからない。
見つかったのは『笛師』だった。
パラパラとめくってみると竜笛のことが書いてある。驚くほどに雅楽に関することも克明に記載されている。
竜笛については製作工程まで書いてある。とことん研究するタイプの作家だということが理解できた。
あまりに詳しいので、雅楽を勉強している私は熱中してしまい、2時間ほどで読了した。
登場する笛師の一族は知恩院と関係が深く、知恩院の裏山の華頂山の山腹には先祖代々の墓があるそうだ。
私の笛も知恩院の雅楽部の方に譲っていただいた。調律も黄鐘430Hz で完璧に仕上がっている。あまりの偶然に驚いている。
文中、演奏する曲目が出てくるが、どれも私の好きな曲で、酒胡子、賀殿急、胡飲酒破、武徳楽、青海波、千秋楽が紹介されている。それぞれ正しいフリガナは(しゅこうし、かでんのきゅう、こんじゅのは、ぶとくらく、せいがいは、せんしゅうらく)である。
間違ったルビがふられているので編集のミスか、新田次郎が演奏まではできなかったのか、どちらかだと思う。
でも、思わず読ませてしまう筆力のすごさに驚いている。