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父親
夜一人、物思いに耽っていると、亡き父のことを思い出した。
優しい父だったが、子供の頃、漫画の本が欲しくて頼んでも買ってくれない。父の財布からこっそり盗んで漫画の本を買ってきたら、こっぴどく叱られて、いまだにその怖さを覚えている。
それ以来、人様のものに手を出すことを考えることなどなくなった。
父は、気が向いた時に兵隊に行った話を聞かせてくれたが、あまり詳しくは教えてくれなかった。よほど辛い体験をしたのだと思う。
呑龍という重爆撃機に機関砲射手として配属されたらしい。
一番前の銃座に座ると、逃げ出さないように出入り口をロックされたとのこと。
この爆撃機で特攻に行くことが決定し、出水基地へ行ったらしい。戦闘機の場合は自分の意思で敵に突っ込むのだからタイミングなどは自分で決められるが、重爆撃機の砲手の場合は人任せなのだから精神的に辛かったと思う。
ところが、何かの理由で帰還したとのこと。父はその理由をあまり詳しくは語らなかった。
今はそこのところの事情を聞く術もないが、今度の同窓会に出席して、その帰りに出水市を訪ね、わかるだけの状況を調べる予定をしていた。
同窓会は残念ながらこの感染症のおかげで、中止となった。またの機会を楽しみにしている。