新居
友人が新居を構えるという。世の中はこの病気の影響で大きく揺らいでいる。社会の仕組みが変わるほどの変化が押し寄せてきている。
大きなお手つだいはできないが、彼と共通の趣味である雅楽の演奏で応援することにした。新居、新築の場合に演奏する『賀殿急』を選んだ。春なので『双調』で。彼が住むであろう地区を車で流して見た。ほとんど人を見かけない。
河川敷で演奏しようとしたが侵入禁止の柵が設けられている。これでは演奏できないので帰宅して演奏することにした。
今までは練習のためだけの演奏をしていたが、初めて人の幸せを願っての演奏だ。緩やかな導入部からだんだん調子が上がって、盛り上がる。落ち着いたところで急に変動が起こり不安定な音になる。乗り越えるとまるで違うフレーズが出てきて新しい展開になる。安定してだんだん盛り上がり、止め手へ続く。なるほど新天地を求めた人に最適の曲だ。
1300年前にできた曲とは思えないほどの名曲だ。演奏技術は未熟だが気持ちは十分に伝わったものと確信している。
演奏中に大切なことに気づいた。管楽器は特にそうだが、前回と全く同じ演奏はできない。呼吸の違い、音の強弱の使い方で次に出せる音が限定される。
演奏中常に次に出す音をどのように出すか決断を迫られているのだ。
人生においても同じ、一生懸命生きている我々は、次にどうするかは常に自分の決断に委ねられているのだ。
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