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ポーラ美術館『カラーズ』展で感じた課題など【後編】

ポーラ美術館(神奈川県/箱根)で5/18まで開催中の『カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ』展は、色の表現を追って時代を横断するという意欲的な企画。
ポーラ美術館は広くて都心ほどは混まないので、空間そのものが作品になるような作品や、大型作品の鑑賞に向いています。そしてキャッチ―なポスターは観光地としての雰囲気とも合っていると感じました。

会場内にはPINTORの鑑賞用アプリが導入されています。
ポイントを押さえた鑑賞や解説への誘導があってかなり便利だと思いました。その場で手軽に感想がメモできますし、ほかの人の感想も読めます。
しかし展示室入り口の案内を見逃すと他に案内がありません。
また、作品タイトルのところなどに[PINTORで解説配信中]などの目印があってもいい気もしました。

展示室入り口のアプリ案内

鑑賞者を作品へ近づける仕掛けや工夫は、正直まだ不足しているような気がしました。解説や各部屋の入口の文章を読んでいる人は多いのですが、絵の前を素通りに近い感じで通り過ぎて行く人が結構目立つのです。鑑賞者がテーマの核心に十分触れられず、置き去りにされているような印象。

もちろんあまり説明ばかりでは「作品を観る」という本分から逸れてしまいます。特にこの展覧会は、見るというより色彩を浴びるような体感型の展示。長い文章以外の手段で鑑賞者の理解を深める仕掛けがあればなと思いました。
たとえばレオナール・フジタの作品では絵の具の成分ごとの発色の違いが説明されていましたが、以前の展示では映像解説がありました。何か理由はあるのだと思いますが、今回もあれば文章よりずっとわかりやすかったと思います。

いわゆる『現代美術』と呼ばれるジャンルの作品は「パッと見て何が描いてあるのかわからない」ものも多く、制作方法や着想に作品の本質があるケースが多いです。
そういった作品を予備知識なく目にして「わかりたいのに全然わかんなかったな」という人も、少なくないのではないでしょうか。
個人的には多少予備知識を付けてから展覧会に行く方が面白いと思っていますが、これは慣れないと結構大変。
新しい技術やサービスなどを採り入れ、サラッと見たい人も理解したい人も、気軽に訪問できる展覧会が増えると嬉しいなと思います。

今回もここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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