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居酒屋韓国 017 -慣れちゃえば楽しい韓国の乾杯 ッチャン!!-

【これは『居酒屋韓国』というエッセイ集の一つの記事になります。韓国で韓国人の友人たちとの交流を通して経験したことや知ったこと、韓国語についてなど色々と書き綴っています。(小休止は主に韓国語学習について書いています)】

 私が韓国を訪れるのは、友人に会うためなのですが、そんな友人たちに最初に出会ったのは日本でした。ですから、出会ったときはみんな、日本に合わせようとしてくれていましたし、「日本ではどうなの?」と日本のやり方に興味があるようでした。それはお酒の席でも同じでした。それがいざ韓国に場所を移せば、今度は私が韓国流を学ぶようになるのはごく自然のことです。
 最初に韓国を訪れたとき、事前に話は聞いていたので不安はなかったのですが、実際はどんな感じなのか興味津々でした。韓国では一度だけではなくて何度も乾杯をするという話。日本人からするとちょっと違和感があるというか、想像がつかないところがあると思います。
 実際に韓国で友人たちと飲み始めると何度も乾杯します。どういうタイミングでするかというと、ノリです(笑)。もちろん、最初の乾杯は日本と同じで飲み始めるとき、私たちの場合は久しぶりの再会を祝してみたいになります。「会えて嬉しいよ」って感じですね。(実際にパンガウォヨ[会えて嬉しい、반가워요]と言って乾杯したりします)
 では、次の乾杯はというと、話の流れに合わせてと言えばいいのでしょうか、その場に流れている空気で乾杯をします。例えば、「その気持ち分かる!」とその場が共感すると乾杯。「お互い頑張ろう」みたいな話の時も乾杯。「応援してるよ」という励ましの雰囲気でも乾杯。「失恋したんだ」と言われれば、やっぱり乾杯。みたいに、その場に何か一体感のようなものがあれば乾杯します。これは韓国の友人たちと飲むからこそ味わえるとても楽しい瞬間です。(でも最初の頃は言葉が不自由だったこともあり、「今のは何の乾杯??????? ……分からない」と謎に思いながらもみんなに合わせて笑顔で乾杯したのは、内緒の話です。)
 日本でも気心の知れた人たちと飲むときは、その場の一体感のようなものを味わうこともあるとは思いますが、韓国の場合、それが本当に多いと思います。もっと言えば、それを味わうために飲んでいるのではないかと思えるほどです。それが、乾杯という形をとって、一種のリズムのようなものを作り出します。楽しくみんなでお酒を飲むリズムとで言えばいいでしょうか、そういう独特の場の雰囲気を作り出してくれます。乾杯の時のかけ声が「ッチャン」(짠)と、リズムを作りやすいというのもあるのかもしれませんが。
 日本のように最初に一回だけやるから意味のある乾杯もあると思います。それは、その場が特別なものであり、これから楽しむぞという合図というか、そういう乾杯。しかし、気持ちの高ぶりや流れに合わせて繰り返される乾杯もまた、そこにいる仲間たちの気持ちをまとめ上げ、高めてくれる良い乾杯です。
 特に私の場合は、再会を祝した乾杯に始まり、話の内容に合わせて乾杯をし、最後にまた必ず会おうという最後の乾杯をするという本当に嬉しくなる乾杯をしてもらえるので、韓国で何度もする乾杯がとても好きです。
 居酒屋韓国、私はそこで飲むお酒だけではなくて、きっとこの乾杯がしたくて何度も韓国に行っているのだと思います。みなさんにも機会があればぜひ一度、味わってほしいものです。「ッチャン」と言って杯を合わせながら、ついていけないと「何の乾杯???????」と思うあの瞬間を。その先にある、乾杯する度に仲が良くなっていくような感じがする乾杯を。異文化に身を投じてこそ味わえる瞬間がそこには必ずありますから。

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