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「京都方言のアクセントと動詞の屈折」を公開しました

ResearchGate に「京都方言のアクセントと動詞の屈折」と題した文章をアップロードしました。以下のリンクからアクセスできます。

https://www.researchgate.net/publication/352990804_jingdoufangyannoakusentotodongcinoquzhe

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内容は、ウェブサイト『京言葉』に掲載されている伝統的な京都方言の動詞の活用体系の一部を、関西ローマ字で採用している曲線声調理論に基づいて整理しなおしたものです。

ここでいう曲線声調理論とは、私が、児玉望 「曲線声調と日本語韻律構造」(2008) を基礎として、教育ローマ字関西ローマ字で採用し、それらと共に発展させている、日本語諸方言の音韻を従来の段階声調ではなく曲線声調で記述するための理論のことです。

従来、日本語の諸方言は段階声調(モーラごとに「高い」とか「低い」といったように高さのパラメータを与えるもので、タカ]イ (高い) などのように隣接するモーラ間の高さの違いを表現するブラケット表記も含みます。)で記述されてきており、音韻論としてもそれで十分なのだという認識が一般的です。

その上で、日本語はモーラごとに高さがあり、それは語に対して「位置」のパラメータを与えることで記述できるから、アクセント(または「アクセント核」)の「位置」によってモーラの「高さ」が指定される「高低アクセント言語」である、というように言われます。曲線声調(ある領域に対してピッチ曲線のパラメータを割り当てるもので、中国語が有名です)で記述される言語とは違うのだ、という認識もセットで言及されることがあります。

日本語のアクセントは古くは山田美妙の『日本大辞書』(1892-1893) から段階声調で分析され、現在のいわゆる「アクセント核」による分析はほぼ同じものが出たのは、宮田幸一の「新しいアクセント觀とアクセント表記法」(1927) が最初です。

今でこそ東京方言は2段階が当たり前になりましたが、宮田以前は3段階や4段階による分析が行われていました。佐久間鼎 の「アクセントの型及び式」(1919) は3段階による分析の例です。また、服部四郎「音韻論から見た国語のアクセント」(1954-1955) では、Bernard Bloch による、4段階による分析が紹介されています。

現在の2段階による分析は当たり前だったわけではなく、いろいろな議論があって「これが最もシンプル」ということで受け入れられてきたものです。しかし、「日本語は本当に段階声調でいいの?」という問いについては、議論が多かったとは思いません。曲線声調理論が受け入れられる・受け入れられない以前に、まず問いそのものがあまり広く認識されていないのです。

先述のように、私は主に教育ローマ字と関西ローマ字を通して、日本語の曲線声調理論を主張しています。一度だけですが、研究会での発表も行いました。しかし、細々と反応はいただけるものの、なかなか議論が盛り上がらず、その一方で日本語諸方言は段階声調で記述され続け、弁別情報が捨象されたまま言語自体が失われ続けている、という状況にあります。記述する前に言語が死んでしまいます。この辺りについての悶々とした気持ちは以下のスレッドの最後の方でも書いています。

新しい理論が受け入れられるためには、少なくとも従来の理論に基づいて記述されてきた言語事実が、新しい理論ではどのように記述されるのかを示す必要があると思います。従来の理論で記述されてきたことが新しい理論でも記述できることを示した上で、なおかつ、記述がよりシンプルであるか、あるいは、従来の理論では記述できなかったことが新しい理論では記述できるということを示せば、新しい理論が正しいことが示されたといって良いでしょう。

今回アップロードした文章は、段階声調で記述されている部分を曲線声調に直したものなので、「曲線声調じゃないと絶対にダメ」な内容はおそらくありません。その意味で、表題の文章は「従来の理論で記述されてきたことを、新しい理論で記述し直してみる」という取り組みの一つです。

本文には私の連絡先も掲載しているので、もし興味を持っていただけたら、いずれかの手段で連絡していただけると嬉しいです。

おまけ

そもそも note をやろうと思ったのは、以下の記事がきっかけです。段階声調に基づく記述ですが、「アクセント単位」について捨象されがちな「下降し続ける領域」の特徴が明示的に述べられているのを見て、表題の文章を書くことを思い立ちました。(本文でも引用しています。)

言語界隈では note をやっている人が何人かいるので、ときどきこうして引用し合い、議論を深めることができれば良いなと思っています。

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