トム・デマルコ/ティモシー・リスター『ピープルウエア』の読書メモ⑥
本書の読書メモも6回目を迎えまして、いよいよ最後の部となりました。今回は「第VI部 きっとそこは楽しいところ」です。
まずは冒頭の文章です。この部はほかの部と比べると短いのですが、この冒頭部分にすべてがギュッと凝縮されているように思います。いわく、
人間が祖先から受けついだ記憶のどこかに、仕事とは煩わしいもの、という考えが潜んでいる。例えば、何かをやっていてそれが楽しいなら、それは本当は仕事ではない。思う存分楽しむようなら、罰あたりである。(P. 255)
いわれてみれば、どこかにこの「記憶」がこびりついているのかもしれません。自分がほかの人よりも楽しく仕事をすることに対する負い目があるような、ほかの人が自分より楽しく仕事をしていることへの妬ましさを感じるような、そんな「記憶」です。
楽しみ過ぎてもよくないし、全然楽しまないのもよくない。楽しむことで金をもらってはいけない。本当にしなければいけないのは、何かほかに仕事、仕事らしい仕事を見つけることだ。そうすれば、他のあらゆる人々と同様に、退屈し、うんざりし、みじめになることができる。(P. 255)
あるいは新人に対して仕事のしんどさ、辛さ、恨みなんかを思わず教え込もうとしてしまうような「記憶」かもしれません。
第Ⅵ部のなかで印象に残ったところは「第39章 眠れる巨人よ、目を覚ませ」です。
あなたがこの本の描写のどれかを見て、悲しげに微笑んでいたのなら、微笑むのをやめて改善のための行動を開始すべきときだ。(P. 275)
そう。やはり行動することが肝要なわけです。
社会学的関係は、技術よりも、ときには金よりもずっと重要な問題である。社会学的関係は、生産的で仕事の楽しさを満たすものでなければならない。そうでないなら、他に集中すべきことなどない。改善すべき問題を慎重に選び、事実を集め、そして、はっきりと主張するのだ。(P. 275-276)
そしてここまでに書かれてきた数々の事例にそのヒントが示されているわけです。
あなたはきっと状況を変えることができる……ホルダーダンスクの力をちょっとだけ借りれば。(P. 276)
ホルガーダンスク:伝説的なデンマークの眠れる巨人。国が平和なときは静かに眠っているが、万一、デンマークが危機に陥ったときは、目を覚まし、恐ろしい形相で怒りだす。(P. 273)
眠れる巨人を呼び覚まし、改善に向けて動き出す。ここで「巨人」は「あなたの同僚や部下で、理性的だが堪忍袋の緒が切れかかった人たち」(P. 274)と説明されています。個人の問題ではなく「みんなの問題」(P. 273)にすることで「意味のある変化」(P. 273)を呼び起こす。それが改革を進めていくことにつながるということが示されています。
さて、翻ってわたしの職場はどういった状況なのでしょうか。
できることから一つずつ、取り組んでいこうと思います。