賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か?
新型コロナウイルスが、深刻になりつつある。先週とは、まるで状況が違うと言ってもいいだろう。
やはりというか、覚悟はしていたものの、僕の所属している 関東サッカーリーグは、先ほど前期を中止するという決断をした。これで、最速でも 7/11 まで、試合がなくなってしまった。
20年、フットボールを続けてきたけど、はじめてのことで戸惑っている。世界が未曾有の危機に瀕しているのだから、そりゃそうなんだけど。
After COVID-19の世界
ピンと来ていない人も多いかもしれないけど、僕たちは、これから激しく、スポーツを奪われていく。この流れは、ひとまず止めることはできないだろう。文化芸術、そしてスポーツは、残念なことに優先されない。これは、仕方のないことだ。
しかし、本当の問題はその先にある。いつの日か ピッチに戻れたとき、つまり After COVID-19の世界で、僕たちは、スポーツを取り戻すことができるだろうか?
これから先「スポーツは必要か?」と、問われる機会が増える。これまでとは、比べものにならないくらいに。なにせ片側の天秤には、人の命・生活というものが乗っかっている。これは大げさじゃない。ひっくり返す必要はない。ただしその天秤は、バランスを保っている必要がある。
君は、答えられるだろうか? そして、スポーツから離れていく仲間に、道を示すことができるだろうか?
カルチャーと生きている人たちが、自分たちの場所を守るために、信じているものの価値を、改めて、言葉に起こすことをはじめている。例えば、ミニシアター、そして、ライブハウス・ナイトクラブ・劇場、それが、単なるエンターテイメントのパターンでないことを、叫んでいる。
──もはや言語にするまでもないかもしれませんが、「人が生きる上でなぜ文化が大事なのか?」という視点から伝え、啓蒙していく必要があるのかもしれません。
Mars89:文化やその多様性は、生き方に関わるものかなと思っています。音楽の話で言えば、日本だけではなく世界中のどこに行っても大多数が聴いているのは、ポップスです。でも、アンダーグラウンドやオルタナティヴな文化があることは、「皆と同じ生き方をしなくてもいい」という安心感にもつながりますよね。メインストリームのなかにいなければならないという意識に引っ張られなくて済むんです。ある意味、セーフティーネットです。
篠田:文化はそれぞれの人やコミュニティにとって、アイデンティティの問題と表裏一体だと思っています。ひいては人間同士のアイデンティティの問題だけではなく、人間とそれ以外を分けるアイデンティティでもある。人間が、動物や機械と決定的に違うのは「文化をもっていること」ですから。もっと多くの人がそうした意識をもってくれるといいなと思いますね。
スガナミ:ライヴハウスやクラブ側の視点で言えば、ぼくは誰も知らないようなアーティストのライヴを観るのが好きなんです。小さい箱は、そういう人たちが表現できる場所なんですよね。そうした「実験」が少しずつ拡がっていくと、人に何かを与えたりする文化に育っていくと思うので。ボトムアップから文化を支える場所が、ライヴハウス、DJバー、クラブだと思っています。
それでは、スポーツはどうだろうか。
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か?」
PayPalの創業者であり、シリアル・アントレプレナーの ピーターティールの言葉をいつも思い出す。「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か?」
現代人が鬱々としているのは、世界のすべての難しい問題がすでに解決されてしまったから(中略)あとに残ったのは簡単な目標か不可能な目標しかなく、それらを追いかけても満足感はまったく得られない。*1
彼は、こういう主張に対して、一定の理解を示しつつ、それでも「隠された真実を探せ」と言う。「重要だけど知られていない何か」「難しいけど実行可能な何か」のことだ。
*2
例えば、僕たちは、サッカーについて「賛成する人がほとんどいない、大切な真実」に気づいている。
それは、サッカーには真の豊かさを作る価値が存在しているということだ。
世間一般は、サッカーには真の豊かさを作る価値が存在しているということについて「知ってるよ、サッカーって良いよね」という定説(簡単)か、あるいは「嘘つくな、サッカーにはそんなことできっこない」という解けない謎(不可能)か、どちらかだと思っている。
しかし、僕らから言わせれば、そのどちらでもない。
https://criacao.co.jp/soccerclub/philosophy/
僕たちは、ここに長々と書いてあるようなことを根拠にしている。言うは易し、ただ、心から賛成してくれる人はまだ少ない。それでも、これが大切な真実だと思っていて、だから僕たちはサッカーをやめない。
君が、スポーツをすることについて、強く説明を求められる時代が来る。外側からも内側からも、だ。「スポーツって、なんか良いじゃん」というこれまでの定説は、After COVID-19の世界では通用しなくなる。
世界とか社会とかを、必ずしも持ち出してこなくてもいい。だけど、少なくとも「大切な何か」について言及する必要がある。そして、それは隠されている。君自身が、考えなくてはいけない。
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【今週の宿題】
スポーツは必要か?
そこにある、賛成する人がほとんどいない 大切な真実は何か?
また来週、会いましょう。
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「学校では基本的には異論のない知識しか教わらないので、この質問は知的ハードルが高い。その答えは明らかに常識はずれなものになるので、心理的なハードルが高いからだ。明晰な思考のできる人は珍しいし、勇気のある人は天才よりもさらに珍しい」
*1 p132
*2 P130