ノルディック柄のセーター
ノルディック柄のセーターが欲しい。
その想いは、おそらくずっと私の中にあった。きっと最初の記憶よりもっと前から。
けれど、その想いをはっきりと自覚したのはこの冬、森星ちゃんのユーチューブを観てからだ。
緑色のたっぷりとしたセーターはショートヘアの小さな頭によく似合っていて、それをきた笑顔の彼女は、とても堂々としていて怖いものなんて何一つないように見えた。
それ以来、私はビビッとくるノルディックセーターを探し続けているのだ。思いが昂じて、居酒屋に居合わせたハゲたおじさんが着ていたセーターをいつまでも眺めていたこともある。
ノルディックセーターなんてなんでもかわいいように思うけれど、何年もかけて思いを心の奥底で燻らせ続けてきたのだから、こだわりは人一倍だ。
まず、今時のテイストがあっちゃダメだ。100年も前のヨーロッパ人がそれを着てクリスマスを過ごしていたと言っても納得できるような歴史を感じること。
次に、深い色であること。水色や薄紫のような淡い色はやっぱり寒々しいような気がしてしまう。ノルディックセーターは赤々と燃える煉瓦の暖炉の側に相応しくないといけない。
そして、しっかりとした毛糸で編まれていること。薄い繊細な毛糸で編まれたようなセーターは、着る人をしとやかな、でも不安な気持ちにさせる。なんてったってノルディックセーターは、たっぷりとふんだんに毛糸を使ってすっぽりと体中を包み込んでくれないと。
ノルディックセーターには、色の濃いデニムと少しメンズライクな革靴を合わせたい。
そうして何にもかもが冷たく澄んだ冬の街を大股で歩き、寒気をその色味と素材感で圧倒する。
帰ったら、網目の間にたっぷりと吸い込んだ透明な空気を、暖かい部屋の中でココアを飲みながらゆっくりと溶かしていくのだ。
私は私を好きになるだろうし、一緒に過ごした人もきっとのどかな気持ちになるだろう。
理想のセーター、理想のコーディネート、理想の冬の過ごし方。
この冬、どうか巡り会えますように。
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