パックス・ブリタニカ
というボードゲームをプレイした。けっこう古いゲームだ。
私は学生時代に何度かプレイし、2000年代にも2度くらいはプレイしていると思う。6人プレイだと、半日くらいは時間が必要なハードなゲームだから、よほどの物好きで無い限り毎週のようにプレイするものではない。
イギリスを初めとした帝国主義の頃のヨーロッパ列強を各プレイヤーが担当し、植民地を取り合って世界の覇権を競う――というゲーム。
第一次世界大戦が始まる年が最終ターンとなるのだが、各国の行動によってヨーロッパの緊張が高まっていくと最終ターンより前に緊張度が100を超え、大戦が勃発してしまう。そうなると即座にゲームは終了。
あるいは、ゲームの流れでヨーロッパの列強(独墺仏英露)のうち4カ国以上が参戦する戦争が発生した場合も、やはり世界大戦勃発とみなされてゲームは終了する。
このルールを利用して、早めに終わらせる駆け引きもできるが、大戦を起こすきっかけになった国は大きなペナルティを負うので注意が必要だ。
6人プレイの場合、プレイヤーが担当する列強は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、ロシア、日本の6つ。他にイタリア(7人プレイだとプレイヤーが担当)やスペイン、ベルギーなどの中小国も勝手に動く。
世界各地の国で利権を得たり影響下に置いたり、保護領にしたり、占領したりしていく(イギリスには占領より上位の自治領、アメリカには州がにできる地域が存在する)。また、各地での植民地確保のための戦争に備えて、海軍や陸軍も作らないといけないし、支配した土地は儲けが多いほど維持費もかかる。
イギリスは、世界中にそうした植民地が散らばっているので、毎ターンの収支の計算が桁違いになって非常に大変。ほぼ、計算し続ける感じ。
毎回入ってくる金銭が莫大なイギリスと、そうでもない他国とでは、そのまま金額を点数にしたら勝負にならないので、ゲームでは「植民地から吸い上げた利益」にハンデをつけて勝利点を換算する。
換算比率はイギリスは1/10、フランスは1/7、ドイツは1/5、アメリカは1/4、日本は1/3、ロシアは1/2.5となっている。毎ターン行動に使わなかった利益(ポンド)は、この比率で勝利点となって蓄積されていく。
その他には、条件を満たすともらえるボーナス勝利点もある。例えばアフリカ大陸の縦断や横断を成功させると何点かもらえる……みたいな感じ。
戦争は、本国から遠く離れた植民地で行われるので補給ラインが切れると戦えない。また港を海軍で封鎖すると、戦わずに相手の陸軍は降伏する。それと、戦闘解決は数が多いほうが絶対に有利。ダメージを与えたり、引き分けはありうるが、少ないほうが逆転することほぼない。なので、戦争を回避するために会議のルールが決まっていて、会議で戦争にならないように処理することもできる。ただし、この会議で無理難題をふっかけて、拒否したら開戦理由ができるので宣戦布告――なんてこともできてしまう。だから、会議になる前の外交(ここが他のゲームにおける交渉にあたる感じ)も大事になってくる。
で、私はアメリカ合衆国を担当した。
ヨーロッパ列強とは同じ植民地を取りあったりしない立場だ。
プレイしたい国Lの希望を言っていいとのことだったので、私は自らアメリカ担当に立候補した。何度かアメリカをプレイしてて、このゲームでは一番好きなポジションなのだ。
まあアメリカは他の国と戦法が違いすぎるし、普通にやってたらほぼトップにはなれない国だって感じではあるんだけどね。
パックス・ブリタニカは旧世界と新世界に分かれた二枚のマップを使うのだが、アメリカが最初に手が届くのはほぼ新世界のみ。植民地経営で賑わっているアフリカ大陸と、周辺から列強が狙っている中国(清)、それにトルコ周辺などのように取るべき美味しい植民地には縁がない。
しかも、北米はカナダをイギリスが押さえてるし、カリブ海の二国はスペイン領だし、南米も独立国ばかりだから強引には支配はできない。これらの国はイベントで戦争をけしかけられるようになったり、暴動が起きたりしないと支配活動ができないエリアなのだ。
なのに私がアメリカを選んだのは、なによりも、ボーナス点がもらえるパナマ運河の建設がしたい(このゲーム最大のロマンだと思う。これができたなら負けてもいいとさえ思う)のだが、それにはパナマか、その隣のエリアに暴動が発生して介入しないかぎり支配できないので、ランダムイベントでの暴動待ちをするしかない。
もちろんゲームだからトップを目指して努力はするが、どっちかというと「他のプレイヤーに新世界への興味を持たせないで、マップの半分を一人でプレイする」というのが、アメリカの楽しいところ。だから「こっちのマップには来るなよ~」をいかに上手くやるかにかかっている。
今回は、イギリスが栄光ある孤立とか言って突っ張るような強気なプレイではなかったので、早い段階ですり寄って米英防衛条約を結ぶことができた。アメリカとことを構えるなら大英帝国が出張ってくるぞ~という感じにしつつ、といって他国に無理難題をふっかけるわけでもなく、「別に新大陸に来ないでくれればいいだけですから~」という態度で、ヨーロッパの緊張が高まるまではこっちもアフリカや中国へは手を出さない作戦。
アラスカをイベントでいきなり州にさせられたり(維持費大変だから、本当はしたくない)、スペインとの戦争が起こってプエルトリコを支配して……から始まって、ハワイを保護領化したりとちまちま進めていたが、ブラジルに戦争をふっかけて保護領にしたあたりから弾みがついてきた。
アメリカは勝利点は1/4倍換算なので、もっと安い変換率で毎ターンの点を溜め込むロシアや日本が怖い。そこで途中からは80ポンド前後は残して20点近くずつ点を確保するよう注意はしていた。他の列強は、アフリカや中国での動きにどうしても気を取られるので、「いいなあ、そっちには手を出せないんだよなあ」感を醸し出すと、アメリカは目立たないし、あまり溜め込んでいるようには見られないので多少の効果はあった。
最終的に、イギリスとの相互防衛関係もそのままで、新世界には他の列強の支配がないモンロー主義を貫けたので、ボーナス10点ももらえた。
勝利点は、ゲーム中盤から日本の溜め込みが声高に警戒されていたのだが、私はロシアのほうが絶対にやばいと思っていた。そこで、必死に「この二国がとにかくトップ走ってるよ~」と強調した。朝鮮を共同統治していた日露が決裂して軍備増強して一触即発になったときも、彼らの勝利点を削ぐのにもうひと押ししたかったが、上手い手が思いつかなかったなあ。
ランダムイベント関連では、アメリカはかなり幸運が続いた。
戦争が起きてブラジルとメキシコを占領できたし、アラスカ、ハワイ、プエルトリコを州にし(大半は最終ターンを見越して段階上げしたので維持費を払う必要なし)。ただ、キューバだけは州にできなかった。
中国動乱のときには、アラスカから出兵してちゃっかり一箇所を支配下におけたし。最終的には清の内部に占領地が二箇所になったし。
もしかしたら1位になれるかも~とひっそり思っていたが、ちょっとイギリスと仲良くしすぎた。最後に猛ダッシュしてイギリスがトップ。先行に逃げ切られたという感じ。独仏がもっと抵抗すると思っていたのに。
というわけで、アメリカは2位だった。
そして予想通りロシアが僅差で3位。危なかった。
もっとも、このゲームは4~7で割らないといけない中堅三国(仏独米)が一番つらくて勝ちにくいと思うので、アメリカで2位なら御の字かな~って感じ。
まあ、ロシアはランダムイベントの暴動が何度も出て、その度に植民省からの収入が0になっていたので(正直、あれは不運すぎる)、それを考えると本当に運で勝っただけって感じだ。
そういえば前にイタリアでやったとき、アメリカ担当のプレーヤーが「今回の私のやったような作戦」をとっているぞ!と必死に他の列強に説き、それを阻んだことがあったのを思い出した。でも、そのときは私は1/2で済むイタリアをやっててトップをとったんだけどね。たしか。アメリカの隠れた動きを指摘するのに説得力を持たせられたから、注意をそらせたというか。
というわけで、久しぶりで面白かった。
またやってもいいけど、イギリスはやりたくないかな。たとえ勝てるとしても、あの計算に追われるプレイは疲れそうだから。
マップ全景。
上が旧世界(アフリカとユーラシア。まあオーストラリアもあるけど)。
下のマップに、アメリカ以外の列強の六角形のマーカーが置かれると、モンロー主義は崩れる。
アラスカ州。
ハワイも州に格上げした。
5ポンドの価値のあるエリアを州にしたので利益は0。
意味はないが、合衆国はやはり州にしたいのだ。
米西戦争で奪ったプエルト・リコも州にした。
キューバも州にすれば完璧だったのだが。
ブラジルも戦争で占領。
戦力20の大帝国だったが、予算を軍備に回して打倒。
占領してしまうと、他国は置いていた「利権」を消去される。「影響下」を消去された場合は相手は宣戦理由を得て、宣戦布告をして開戦する可能性があるが、イギリスはOKしてくれたので、フランスも渋々同意した。
第一次大戦直前にメキシコも占領。
北米、中米、南米に支配地を得たのは大きかった。