超時空薄幸児童救済基金・16
(はじめに)
マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。
私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。
また、時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(数字のあとにReとつくもの)が書かれることがあります。こちらのReは基本的に全文が無料となります。
(バックナンバーについて)
マガジンのトップで一覧を見てください。
時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追って読むことができます(今もその仕様が続いているといいのですが)。
※もともとは、現実の時間に合わせて月一回の更新をしていましたが、本業の執筆が忙しく、現在は季節がずれてしまっていました。最近はだんだんと合いつつありますが、またずれてきてしまいました……ううう。
では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。
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雨が降ってばかりの、あまり夏らしくなかった夏も終わった。
コトイシの世界も、だいぶ秋らしくなってきたことだろう。
とくに少女たちの住んでいる辺境の砦は秋が短い。そして、長く続く冬も、こちらの世界の冬とはかなり異なる。
そうしたコトイシの冬のことは、去年の手紙で知った。
当時の彼女はまだ騎士見習いで、砦を出て大森林に分け入ることはほとんどなかったが、今は違う。騎士と共に大森林の奥へと「馬」を駆り、正式な騎士になるための修行を続けている。
彼女からの手紙は、いつもに比べると少し間が空いてしまっていたが、砦がようやく平穏を取り戻したのだし、私はそれほど心配していなかった。
きっと修行に夢中なのだろう。
それでもまあ、こちらとしては彼女の手紙が待ち遠しい。
便りを手に、連絡係の男が現れると、私は仕事の忙しい時期にもかかわらず、嬉しさのあまり彼を部屋に招き入れていた。
珍しく晴れが続いて暑い日だったので、冷たい飲み物をふるまったほどだ。
手紙を差し出した連絡係の男も、ずっと少女の安否を気遣っていたここ数ヶ月のような深刻な顔はしてはいない。
いつもの落ち着きを取り戻していて、私に「あとで手紙の内容を聞かせてくれ」とは言ってこなかった。
男は、私が夏の間は毎日のように作っている水出しのアイスコーヒーを美味そうに飲み終えると、礼を言って立ち上がった。
「ごちそうさまでした。では私はこれで……」
「ゆっくりしていってもかまわないよ」
「いえいえ、彼女はもう心配ありませんからね。もう失礼します」
と、帰りかけた男は、「あっ」と言ってふり返った。
「話し忘れるところでした。実はですね、少々困ったことがありまして……」
「えっ?」
たった今、心配ないと言ったくせに?
「すでに彼女の誕生日を過ぎてしまいましたが、髪飾りの職人の仕事が、もう少しかかるようなのです。なんでも素材の問題とか。あの骨は細工に手間がかかるようなので……」
なんだ、そんなことか。
「まあ、しかたないさ。本来なら正式な騎士になったときの記念にあげたいと思っていたし」
もっとも、彼女は「今年はプレゼントが届かないのか」とがっかりするかもしれない。
「それなら、こちらへの贈り物も考えなくて大丈夫だと、それとなく伝えてやってくれないかな。修行で忙しいと思うからさ……」
「わかりました。やってみましょう」
そう言って、男は引き揚げていった。
一人になった私は、さっそく手紙を読むことにした……。
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