職人さんに聞きました「出雲のお土産 何がよい?」-② 長田染工場
出雲のお土産って何がいいんだろう?
と、出雲の職人さん(そば職人さんはのぞく)に聞いて歩くこの連載。出西窯の陶工、中鉢さんからの紹介で長田染工場の長田匡央さんにお話を聞きました。
明治20年創業の「長田染工場」は、昔ながらの技法である「筒描藍染(つつがきあいぞめ)」を受け継ぐ藍染の工房。長田匡央さんは四代目。五代目のお父さんと親子で、筒描藍染の技法を守り続けています。筒描藍染は「島根県指定無形文財」「島根県ふるさと伝統工芸品」に指定されています。
長田匡央さん(五代目、以下:長田) ようこそ。 中鉢さんから聞いていますよ。
365 自然の力を使った伝統的な技法でものづくりをされているのですよね。
長田 筒描藍染は生地に糊(のり)で文様を描いてから、藍染を行う技法です。藍甕(あいがめ)に原料となる蒅(すくも)を入れて発酵建てをします。
365 発酵建てと言うのですか。微生物の力で、染め液を作ることができるんですね。発酵は食べ物に使う言葉だと思ってました。
長田 ちょうどこの藍甕の中で発酵していますよ。水の中に、空気に触れると青く発色する色素(インジカン)がいる状態です。染め液ができるまでには、大体10日〜2週間ほどかかります。
365 しっかり時間がかかるのですね。
長田 染め液ができた藍甕の中に生地を浸けて染めます。ちょっとやってみましょう。
365 魔法のようですね。
長田 この工程を何度も繰り返して狙った色に近づけていきます。毎回同じように目標とする色を出せるとは限らないので、難しいところです。
365 長年やっておられても、思い通りにならないのですね。作品づくりの様子、撮影させてもらってもいいですか?
長田 ええ。いいですよ。
長田 発酵は微生物のはたらきなので、染め液は生き物なんです。環境は気温や湿度など様々な要因で変わりますから、「この割合で配合すれば毎回同じようにできる」というわけにはいきません。ある程度、こうすれば良いという方法はありますが、目標とする青の濃さにこだわると、毎回調整が必要ですね。
365 日々目に見えない力と向き合い続ける作業なんですね。
長田 自然の力を使うので、もちろん失敗することもありますし、今でも新しい発見の連続です。
365 筒描きについて聞かせてください。描かれている文様を筒を使って糊で描くので筒描藍染なんですよね。
長田 そうです。筒を使って布に直接糊で文様やデザインを描き、その布を20回藍にくぐらせた後、糊を落として出てくるのが筒描藍染の線です。
365 (ちょっとやらせていただきつつ)あ、これは糊を出す力加減で線の太さが変わって、糊が生きもののようです。やばい。
長田 同じ絵を何枚描いても、一本一本が違う線が出てきます。
365 出来上がりは、色もですが線のがいきいきしていていいですね。優しさを感じる縁起物の文様も素敵です。見ているだけで運がよくなりそう。
長田 「長田さんといえばこの文様だよね。」と言っていただきます。ただし、筒描藍染の筒描きはあくまで技法なので何を描いても良いんですよ。
これまでも様々なものを描いてきました。例えば、ファッションデザイナーさんが鉛筆でスケッチを描かれ、それを私が筒描きしたこともあります。
365 筒描きの技法が生み出す生命力に溢れる線は、本当に魅力的ですね。深い青を引き出すための偶然性を取り入れながら、そこに作家性を織り交ぜていく作品づくりのプロセスに大きな感銘を受けました。出雲のお土産には「自然が生み出す偶然性」そんなキーワードが思いつきました。
長田 それなら「吉や」の松谷さんを紹介しましょうか。地元の木材を使って人形づくりをされています。松谷さんの魅力的な人柄が、木地人形にそのまま表れていて、そこからでしか生まれない世界と、可愛らしい作品たちが僕は大好きです。
365 木は年月を重ねることで見た目を変化させていきますものね。
ということで「出雲のお土産 何がよい? その②」は「目に見えない自然の力」とさせていただきました。
発酵菌の力を借りて深い青色を生み出す、長田染工場の染め物はまさに「目に見えない自然の力」を商品化したもの。
手作業で丁寧に縁起のよい絵柄が描かれており、昔から婚礼時の嫁入り道具として、赤ちゃんのお祝いの品として愛されてきたそうです。
上写真のコースターや、ストールなど日常使いの商品も揃っています。
次回は、長田さんにご紹介いただいた「吉や」さんへ行ってきます!
お買い求めは
⚫︎長田染工場 工房内 (※日によって、取り扱いがない場合もございます。)
⚫︎オンラインショップ
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