#29 小説『メディック!』【第6章】6-1 ナオ×美夏 セラピスト
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第6章 ナオ×美夏 セラピスト
待ちに待った夏季休暇がやってきた。
訓練終了後、皆がいそいそと帰省支度をするのを、勇登はベッドの上に座って見ていた。
同期で唯一の妻子持ちの剣山は、ここに来てからずっと家族に会いたがっていた。卒業して次の赴任先が決まったら、また家族と暮らす予定だと話してくれた。そして、一番に居室を出て家族のもとへ帰っていった。
吉海はどうやら同じ基地内の第5術科学校の英語村に彼女がいるらしく、その子と過ごすといって上機嫌だった。
ジョンは行動計画書では実家に帰るとなっていたが、ベッドの上でゴロゴロしていた。
宗次は明日の飛行機で福岡に帰るというので、勇登は自分の実家に一晩泊まることを提案していた。やはり宗次も基地内ではリフレッシュできないのか、喜んでその話に乗った。
勇登は誰もいない家のドアを開けた。猫のニャーは勇登が入隊してからは母、由良と暮らしている。由良は休暇が合わず今回は帰らないといっていた。
勇登は宗次をリビングに通すと、適当に座るようにいった。
宗次はリビングの隣の畳の部屋にある仏壇に気がついて、手を合わせたいといった。宗次は父の遺影をじっと見ていたが、勇登はただ「父親の写真だ」といった。
その後、勇登と宗次は早速コンビニで調達したさきいかとビールを開けて乾杯した。宗次は期別的には勇登の先輩だが、同い年ということもあり、この数カ月で本当に仲良くなっていた。二人で訓練、同期、教官の話、これまであったこと、だらだらとそんな話をして夜遅くまで盛り上がった。
翌朝、宗次を送り出そうと勇登が玄関で準備していると、チャイムが鳴った。誰かと思いながら扉を開けて、勇登は面食らった。
「おはよう」
そこには満面の笑みを浮かべた飯塚美夏が立っていた。
つづく
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※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。