鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻
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ぬらくら同士の心やすさや
松笠に燗焚風情旅に似て 樗堂
名ウ三句、 旅人一茶に亭主樗堂の気遣いが。
〇
松笠に まつかさ・に。松の木の実、まつぼっくりのこと。格助詞「に」。
燗焚 かん・たく、酒の燗をきく(松笠を)焚いて。
風情 ふぜい、気配、様子、有様。風流・風雅の趣、情緒とも。
旅に たび・に。旅行もあれば、修行もあった。往きて帰らぬ旅さえも。
似て に・て。「似る」の連用形に、接続助詞「て」が付き、性質・状態が同じである意。
〇
ぬらくらどしの こゝろやすさや
まつかさに
かんたくふぜい
たびに
にて
松笠を焚く、どうしたって十分な持成しもできず、ご不自由をおかけしていることでしょう。と、松山での一茶の暮らしぶりに樗堂が言葉をかけていたのです。
〇
俳諧に
翁を茅舎に宿して
おもしろう松笠もえよ薄月夜 伊賀 土芳
「「おもしろう」の句は、芭蕉をとめた時の句で、何も御馳走もなく歓待のしようもない、折節の薄月夜に、そこに七輪なり竃の下なりに焚いている松笠でもおもしろう燃えたらよかろう、というのであります。」と。
高浜虚子「俳句とはどんなものか」初出「ホトトギス」大正2(1927)
句に
松を見にきた砂を手で掻く松笠焚くほど 碧梧桐
などが。
26.10.2023.Masafumi.