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風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻

     08

節句とて弟の五郎もむつましく
 世にも粟津の系図百姓      兎文

初ウ二句、ふたり頷く顔と顔、これ歌仙の醍醐味。

     〇

世にも 世にも○○、以下の内容を強調するコトバ。

粟津 他でもない、あの粟津の!!

系図 家譜、あるいは系譜のこと。

百姓 百の姓(ひゃくせい)

     〇

せっくとて おとのごろうも むつましく

 よにも
 あわつのけいず
 ひゃくしゃう

前句は「曽我物語」。兄が十郎で弟が五郎 ?  父が河津で子が曽我 ? 敵が祐経、父祐奏、子は祐成 ??  genealogyでも紐解かなければ分からない。翻って、それぞれ異なった境遇にありながら、こうして俳諧に遊べるのも<ふたり>は粟津に眠る翁の縁に連なっているからなのでしょうね、と付けた句。「粟津の系図」が読筋の肝。

     〇

一茶は、「西国紀行(寛政七年紀行)」に際し二六庵竹阿のあとを追っていました。

兎文は、来訪のあった人々との応接に勤めながら、在地の時流に逆らうことなく俳諧をよくしていました。

そんな<ふたり>、初対面乍なんとなく気があっていたのです。

     〇

芭蕉の句に

蕎麦も見てけなりがせよ野良の萩

と。(元禄4年、丈草、乙州らと、近江粟津の荘右衛門宅を訪ねた折の句です。荘右衛門こと山姿は芭蕉門人として俳諧をよくしていました。)


1.10.2023.Masafumi.

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