謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
07
ほろつき出たり雨の春風
花菫葬のちよろちよろ燃しさり 樗堂
初ウ一句、花菫を相聞の句に詠み裏入り折り立に。
〇
花菫 はなすみれ。芭蕉以来俳諧の花に、子規派「新俳句」の表紙絵にも。
葬の さう・の、葬儀の。
ちよろちよろ 縦書きだと「ちよろく」と。視覚に訴えるオノマトペ(音ではありません)
燃し もやし 燃やす。
さり 去り、ここで完了、句の切れ。
〇
ほろつきでたり/ あめのはるかぜ
はなすみれ さうの ちょろちょろ もやし さり/
春風は、花を咲かせば人も燃す。句は相聞、これより無常の世界へと誘われて行くのです。
〇
歌仙の運びがらすれば、「野ざらし紀行」の貞享二年(1685)伏見の山越えから、芭蕉終焉の元禄七年(1694)伏見から膳所義仲寺までの棺を曳く人々の俤を、まるで走馬灯を見ているかのように描いていたのです。
思えば<夢、幻の如く>と。
旅に病んで夢は枯野をかけめぐる 芭蕉
23.11.2023.Masafumi.
余外ながら
◇「野生の三色すみれ」を書いたレヴィ=ストロース先生がお亡くなりになったのはパリでした。ご遺体はブルゴーニュの森にあるお屋敷の近くの Lignerolles 村の共同墓地の一画に埋葬されています。それはちょうど、先生の生存中の主要な著作の末尾に、書き始めの場所と日付けと、筆を置いた場所と日付が記されていたように、人生の閉じ目も亡くなられた場所と埋葬場所が同じように跡付けされていたのです。
◇ Roland Barthes " L'empire des signes " 「表徴の帝国」宗左近訳 新潮社 「記号の国1970」石川美子役 みすず書房 この本で、いくつかの俳句がロラン・バルトによって分析されていました。
◇ 大島渚作品に " L'empire des sens "(映画のフランス語タイトル)があります。邦画「愛のコリーダ」三一書房のシナリオがありましたが、日本では裁判にまでなった問題の書。ポルノでいうなら Tinto Brass " Senso '45 "などがあるのですが、こちらはお咎めはなかったのでしょうか??
◇ 大島渚監督と云えば、なんと云っても、映画「戦場のメリークリスマス」(1983)。今年お亡くなりになった音楽の坂本龍一さん。”Merry Christmas, Mr. lawrence." は、ビートたけしさんの台詞、映画の題名にもなっていました。