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仕切り直し樗堂一茶両吟/藪越やの巻

     丗一

 砧の棒の椿けづりつ        一茶
ぬらくらと番日怠る病あがり     樗堂

名ウ一句、名残の裏入り、近世<怠惰>の風俗。

     〇

ぬらくらと だらけた様子。

番日 当番にあたっている日。町方では日番、月番、年番。村方では池番、樋番、関番、水番など。士の勤番は交代して職務を遂行すること。古く、番は<つがひ>とも。「番日迚蜘手に割し青田哉」一茶。

怠る 「サボる」(近代での用例)

病みあがり 「まだ体力気力が回復していないものですから、これでおつとめに出たのではかえってご迷惑ですので」と当番を代わって貰っていたのです。

     〇

 きぬたの
     ぼうの
        つばき
           けづりつ

ぬらくらとばんびおこたる やみあがり

根を詰めての暮らしのなかにありながら、ひょいと気が抜けたような怠惰にひたることもありました。寛政版サボタージュの人情風俗を名ウ入りの句にしていました。

     〇

輪番、あるいは当番制によって集団や組織を運営すること。

それは、この島々では古から連綿と続く来歴があったものですから、近代になってもずっと身に着いた習慣になっていました。

例えば、律儀におつとめをすることを前提にしながらも、軍隊や学校あるいは工場などで、そのおつとめをサボる歌が面白可笑しく唄われてきたのも、それなりの理由のあったことなのでしょうね。

チンカラ節、高校歌、女学生歌、逍遥歌、応援歌など、、、、、

     〇

さて、噺をもどして、歌合の故事から、

圓位上人 昔よりみづからがよみをきて侍歌を抄出して 丗六番につがひて 御裳濯歌合と名付て 色々の色紙をつぎて 慈鎮和尚に清書を申 俊成卿に判の詞をかゝせけり。

又一巻をば宮川歌合と名づけて これもおなじ番につがひて 定家卿の五位侍従にて侍ける時 判せさせけり。

「西行法師が御裳濯歌合并びに宮河歌合の事」『古今著聞集』巻五

多くは、つがひに「番」の字をあてていました。

17.9.2023.Masafumi.

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