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鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻
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賭に舟取られぬる松浦がた
やたらに火焚夜の罔両 一茶
初ウ八句、罔両と付けて月の座をこぼした一茶の句。
〇
やたらに 矢鱈に、むやみに。
火焚 ひ・たく、火にくべて燃やすこと。また、火薫くと書けば、香をくゆらすこと。
夜の罔両 よる・の・かげぼう、罔両は「まうりやう」と読むべきところなのですが、これを「かげぼう」としていました。
〇
かけものに ふねとられぬる まつらがた
やたらにひたく よるのかげぼう
一寸先は闇とばかりに、火をもしているのは一体誰なのでしょうか。罔両か、はたまた影坊か ?
〇
罔両なれば「日既に山の端にかかれば、夜座静に月を待ては影を伴ひ、燈を取ては罔両に是非をこらす」の幻住菴記。
影坊なれば
きえぬそとばにすごすごとなく 荷兮
影坊のあかつきさむく火を橈て 芭蕉
あるじはひんにたえし虚家 杜国
「冬の日」巻頭の歌仙初ウ五句、芭蕉の俳諧。
いずれにしても秀句取りの一句だったのです。
23.10.2023.Masafumi.