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母の口癖

「どうせわたしなんて」が、母の口癖だった。

父と喧嘩した時、よくそう言い返してた。
喧嘩はしょっちゅうだったから
多分死ぬほどこの言葉を聞いてきたはず。

口に出さないまでも、態度にも出ていたように思う。
だからと言って、家で大人しく小さくなっていたわけではなくて
同居の義母(ここちょっと複雑で母の母でも父の母でもない。私にはおばあちゃんが3人いた。)や父にも自己主張していた。

でもどこか卑屈な感じがしたのは
根底に「どうせわたしなんて」があったからかもしれない。
自己主張も相手にぶつけるような、歪なモノだった。

私はそんな母が嫌いだった。
思春期の時はホントイヤで
高校卒業したら絶対家を出ると決めていた。

思春期の頃の「母が嫌い」という印象が強かったんだけど
その前はどうだったんだろう?

父と母が喧嘩してるのは本当にイヤだった記憶はある。
でも「イヤだ」「やめて」とは言えなかった。
言えないけど気づいて欲しくて
喧嘩が始まると大音量で椎名恵の「悲しみは続かない」を流したこともあった。

人は誰も弱くて 間違いを起こすけれど
本当の愛があれば乗り越えて行ける〜♪

↑これを伝えたかったんだけど
2人はそんなこと気づかず(そりゃそうだ)
力強い歌声だけが虚しく響いた。

お父さんとお母さんには仲良くして欲しい。
そう願っていたんだな。
この頃は父のことも母のことも好きだったんだろう。


母はなぜそんなに卑屈だったんだろう?
ふと思った。


母は孤独だったのかもしれない

そう思ったら泣きそうになった。

同居の義母とも仲が悪く
父とも喧嘩ばかりの毎日。

父と喧嘩してそのまま母が家出をしたことも思い出した。
私が泣きながら迎えに行ったら
母も泣いていたことを覚えている。


大好きなお母さんが「どうせわたしなんて」って言ってるのは悲しかっただろう。
「そんなこと言わないでよ!」って
本当は怒りたかったのかもしれない。


怒りたくても怒れなかった
そんな小さい私を
まだ見つけられないでいる。

故に暫く母のことを書き続けてみようと思う。


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いしかわ いづみ
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