噛み合わせとお口、全身の健康バランス
今週は噛み合わせとお口、全身の健康バランスについて少し簡単にご紹介したいと思います。
口(上下の顎)を閉じると歯は上下規則的に噛み合います。そして、顎の関節が適切な位置にある時、口はスムーズに動きます。噛み合わせとは、このように前歯、奥歯、顎の関節がバランスよく調和して動いている状態が正しい噛み合わせになります。
ところが、食事の時に右側だけで噛んで食べてしまうなどの噛み癖や虫歯、歯周病の悪化、ストレスなどがあると噛み合わせが狂います。例えば虫歯などで下の歯を1本失うとその両隣の歯は歯を失った空間に倒れこみやすくなり、さらに失った歯の上の歯は噛み合う相手がいないので、下に伸びてきてしまいます。こうなるとこれまで調和を保てていたその他の歯も少しずつ位置がずれて歯列も噛み合わせも次第に狂いだしてしまいます。
また、噛み合わせが狂うと、歯や口を動かすために無理な動作をすることになり、この無理な動作で顎関節や筋肉を傷めてしまうと顎関節症、頭痛、肩こり、腰痛などの症状や悪い姿勢など全身の変調につながっていくこともあります。
歯は「食べる」、「話す」、「飲み込む」、「「噛みしめる」、「頭や顔、姿勢を維持する」など様々な働きをしています。たった1本の歯が抜けてしまうことで全身のバランスや健康にまで影響しかねません。虫歯や歯周病の予防とともに、噛み合わせのチェックも行ってみてはいかがでしょうか。
上述したように、下の歯を1本失うと歯並びがずれてしまって次第に噛み合わせがずれ始めてしまいますが、それだけではありません。もし失った歯が1本でもそれが奥歯だとすると噛む力が3~4割も減少してしまうというデータもあります。噛む力が弱まると、きちんと噛み砕けずに食べ物を飲み込むようになるため胃腸に負担がかかって消化不良を起こしやすくなります。
人間が活動するにはエネルギーが必要です。そのエネルギーを補給するために重要なのは食事です。しっかり噛んで食べるということが胃腸への負担軽減の始めの一歩ということなので、口は全身の健康の入口と言えます。
虫歯を治療すれば虫歯自体は治りますが歯は決して元には戻りません。ご自身では感じないような虫歯の治療箇所のわずかな隙間も虫歯菌などには十分なスペースとなって新たに虫歯が広がってしまいやすく、治療を繰り返すことで自歯の部分が減って歯の強度は弱くなり、最終的には抜歯せざる負えない状況に至りやすくなります。
一方、歯周病は痛みを感じず人知れず進行する沈黙の感染症であり、気付いた時には歯槽骨が溶けて歯が抜けてしまうという最悪の事態になっていることもあります。また、進行を抑えることはできても完治することはありません。
噛み合わせが変化しないように、ご自身の歯を少しでも削らず、また失ってしまわぬよう、虫歯や歯周病の早期発見に最も効果的な歯科での定期検診を受けて、お口の健全性から全身の健康バランスを守るようにしましょう。