東欧が共産主義だったときの話
元夫のおじいさんは、ハンガリーのドナウ川沿いの小さな街で有名なお医者さんだった。お金がない人も、雪の中、診察に行ったりして人望の厚い人だったそう。彼は、プロテスタント系のキリスト教信者で信仰心が強かったらしい。宗教を否定する共産主義国家になってからも、変わらず宗教熱心。人望の厚い彼は、度々、共産党に呼ばれたそう。彼が共産党員になれば、多くの人が共産党を良く思うようになるから、共産党員になるように説得されたけど、絶対にそれには従わなかった。共産党員になれば、豊かになるけど、そうしなかった。ベルリンの壁が崩れた後、彼はその街で豊かになることはなく亡くなった。私は、お会いできなかったけど、彼の娘である義母やその兄妹、孫たちはお爺さんのことを誇りに思っていて、よく話をしてくれました。その奥さんのイロナおばあちゃんはも豊かではなくて。おじいさんの立派な姿勢に初めは感動していたけど、そのうち共産党員になっていたら、自分が目の前にしている家族たちは、もう少し楽できたのもしれないなと思ったりした。最後にそう思ってから何年も経って、いま考えてみると、やっぱり、おじいさんの信念を貫くあり方は、わたしが彼だったとしても同じことするなと思った。