小説「よそんちの子達」
昔虐められていたから、子どもなんて嫌いだ。嫌いなのに妊娠をして、育てるつもりが無かったからどっかよそのお宅にあげようと思っていた。が、収入がとか手続きがとかめんどくさいことを後回しにしているうちに、その子どもは私の側で12歳になっていた。子どもは勝手に大きくなる。水と空気と、光と、栄養と、暖かい寝床があれば大きくなるのだ。子どもとは、動物よりも植物みたいだと私は不思議に思っていた。私のところの子どもが友達を遊びに呼んでくる。うちの隣は耕作放棄地で、蛇が居たり虫が捕まえられたりして面白いのだそうだ。そこで、みんな泥だらけになって遊んでいる。何度か、うちのこが帰ってこない!と町内放送の対象になったのだけど、子どもたちがみんなうちの隣で遊んでいることが分かってからは、私は厳粛に叱られ、よそんちの子達はおとがめなしになった。彼らは、草ぼうぼうの田んぼに寝転がって、空を見ているのだった。動きたくないなあ。動きたくないよなあ。と、そこにいる。私はそんな彼らの事を、とても好きだと思った。人を、ひとたちを好きになれるなんて、本当に信じられないと思った。