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小説「こころを食べる鬼」

そんなこまっしゃくれたなりばかりしとると鬼も食い残すもんにしかならんぞ。とじいさんがよく言っていたなあ、と、自己嫌悪とか自殺念慮とか怨嗟とか辛酸とかのすきやきみたいになった自分とふたりで酒を飲んでいる。私は心が汚い。だから、鬼も、よってこない、不味いから。しかし、じいさんは別には、「ま、ちったあきったなげにしとれえ」と、も、言った。心配していたんだと思う。心のキレイな人は鬼に好かれるから、食われやすい。食われて惜しいかどうかはともかく、まあ、少しくらい汚くしておけ。現にじいさんの近隣の人は、よく、早く亡くなったそうだ。生きていいことがあるかはわからない。でも、同じ死ぬなら鬼に食われるよりましな方法をもらいたい。だから、心は多少汚しておけ。そんなじいさんは、私が2歳の時に梯子から落ちて死んだ。

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