小説「私は空気ではない」
小学生の時。不幸の手紙が流行って。担任の先生が粘着質と言うのかやりだすと歯止めが利かないタイプの人間だったために、手紙が届いた全員の現物をつぶさに検討して、最終的に首謀者を突き止めたことがあった。掃除係の盛田さんだった。盛田さんは空気見たいな人だった。在るのは分かるけどそれがほんとかどうか分からない。悪い人じゃないんだ。なんでこんなことを?と問い詰めると、やってみたかったから、と答えた。盛田さんちには真面目なお父さんと器用なお母さんと、働き者のおばあちゃんが居て、いつもきちんとアイロンの掛けられたシャツやスカートを履いていた。普通、と言うやつ。普通の盛田さんがこういうでたらめなことを起こす。空気見たいなくせに、時間と体力を搾取した。その後、盛田さんは問題なくクラスに溶け込んだけど、私は、空気なんて、なんて嫌なものだ、と言うイメージだけが残った。