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#読書の秋2022におすすめしたい法月綸太郎 と作中の音楽

法月綸太郎の作品を手に取ったのはKindle Unlimitedで読み放題のタイトルに入っていたからだった。登場する探偵と作者の名前が同じ、しかも探偵の職業が作家という部分は有栖川有栖もそうであるが、そうしたスタイルでミステリを書く作家とはどんな人物だろうと作家本人に若干の興味を持ちつつ数冊乱読した後、「頼子のために」を読み進める中おおっ?!と目を引いた一節がこれだった。

頼子のために


そして


ジョイディヴィジョンは本編を通してモチーフになっていて度々登場する。

「頼子のために」全編を通して伝わる独特の、モノクロームな空気感は正にジョイディヴィジョンの音楽的世界観と通じる。10代の多感な時期にジョイディヴィジョンと出会った頼子は何を受け止めたのか、ふと、自分がまだ手探りで音楽を聴いていた頃と重ね合わせ、そしてイアン・カーティスの抱えた孤独と頼子のそれを重ね合わせてみる。




ミステリとしての完成度もさることながら、放たれる言葉の数々が段々と自分の中に浸潤していき、頼子の絶望や悲しみと、知らぬ間に距離を縮めている自分に気付いた時、物語が終わりを迎える。この本にはもっと早く出会いたかった。


ふたたび赤い悪夢

「頼子のために」の事件の衝撃を引きずった主人公の綸太郎は「ふたたび赤い悪夢」でも、イアン・カーティスと頼子のまぼろしを見る。


法月綸太郎がモチーフにする少女たちは悲しみに満ちて魅力的だ。


法月綸太郎の冒険



その一方で90年代の華やかな空気を感じるこんなシーンもある。

デート未満の車での遠出の車中で交わされるこうした短い会話から、二人の距離が少しのユーモアと共に伝わってくる。短編集「法月綸太郎の冒険」は「頼子のために」のようなひんやりとした絶望とは一変して、バディのような存在感とおおらかさを持つフットワークの軽い穂波の存在が明るい光のように差し込んでくる。


番外編

シリアスなトーンで進んでいく「ふたたび赤い悪夢」ですが唐突にこんなシーンが挟まれます。主人公、綸太郎が聞き込みをしていくシーン。

このページで空気が一転し、腹を抱えて笑いました。
今日紹介した3冊は2022年11月現在、Kindle Unlimitedにて読み放題の対象となっています。私は読み放題で読んだ後、Kindle版を3冊とも購入しました。手元に置いておきたくなる作品たちです。

今日の1曲



#読書の秋2022

今日のパンが食べられます。