まずは保育士さんの仕事を楽にしてあげましょう 〜30人の子どもを一人の保育士で見させる社会からの脱却〜
「黒澤さん、保育士は本当に辛い状況に立たされています。保育士が膀胱炎になりやすいという話ご存知ですか?なぜなら、保育士にはトイレに行く時間もないからです。このままでは、子供達を安全に保育するのも難しいと思います。お願いします、この状況をなんとか変えてください」
先日、保育所に勤めている方からお話を伺いました。
トイレに行く時間もないような、そんな過酷な労働環境がなぜそのままになっているのでしょうか。
みなさんは、保育士一人がどれくらいの人数の子供の世話をしているか知っていますか?
以下は、国が、これぐらいなら保育士一人で面倒が見れると考えられている子供の数です。そして、この数字を元に、人件費の助成金を出しています。
保育士配置基準
0歳の場合 3人
1−2歳の場合 6人
3歳の場合 20人
4−5歳の場合 30人
子育てをしたことがある方なら、一人でこの人数の子供を世話するというのがどれだけ大変なことか分かるでしょう。特に、30人の幼児を一人で見るのは、どう考えても不可能です。この数を決めた人は、一度も保育の現場を見たことがないのではないでしょうか。助成金は配置基準で計算されるので、この本当に最低の基準に沿った人数しか、保育所を支える保育士を雇えません。
この配置基準が作られた当時(1948年)は、専業主婦や2世帯同居も多く、保育所の利用は一般的ではありませんでした。しかし、時代は変わり、核家族化が進み、共働きも増え、保育所の利用を望む人が増えてきました。このまま需要が伸びていけば、保育の場が回らないのは明らかです。でもこの配置基準は見直されていません。千葉市も上乗せ条例で若干の改善を試みていますが、全く足りていないのが現状です。
少子化対策として政府は何をしたのか
政府は保育士の賃金を月額9000円引き上げるための措置を令和4年2月から実施(令和3年度補正予算の「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」)
よく考えてみてください。
月に9000円給料が上がって、トイレも行けない保育士さんの激務が楽になりますか?
給料を上げながら、労働環境も同時に改善しないとダメなんです。
この労働環境の改善のために、まずやるべきことは、保育士一人で面倒が見れると考えられている子供の数である、この「配置基準」を変え、保育士を雇う助成を拡充することです。
実は、保育士の資格を持っている人は全国で154万人います。しかし、その中で実際に保育の仕事をしているのは、たった1/3の59万人しかいないのです。
保育士の資格を持っているということは、子供好きで、子供たちを幸せに育てたいという志を持った方々のはずです。そんな人たちが、なぜ、保育に携わることを断念したのか。
最近は、保育園の不祥事が大きくニュースに取り上げられていますが、ほとんどの保育士は、子供のことを本当に大事に思ってがんばってやっているはずです。けれども、どうしても、目が、手が、届かない。余裕がない。
そんな、現実に絶望し、保育の現場から去ってしまっているのです。
保育士さんの幸せは、子供達の幸せにつながります。わずかな賃金アップだけではなく、原因である「配置基準」を改善するよう声を上げましょう。
まずは、千葉市から変えていきましょう。
みなさんのこころをつないで、やさしい社会を作っていきましょう。
参考:各国の配置基準