176 悩みはアメリカ人にすっぽかされること。
アメリカ人と仲良くなるのは難しい。
2021年のコロナ禍、小さなリベラルアーツ・カレッジのキャンパスにいる学生は半数のみ。
しかも最初は戻ってきたアメリカ人学生によって少し感染が広まってしまいましたが、やがて落ち着き、オンライン授業に加えて少しずつ対面での授業も行われるようになりました。
2年生になって、映画専攻の授業もようやく概論ではない専門的な授業が始まっていて、念願だった教授の授業も受けられるように。
寮の部屋を出て教室で授業を受けられるのは、ようやく少し解放される感じだったようです。
ところが、それによって別の問題も出てきていました。
1年生の新学期の初めに、留学生のオリエンテーション・ウィークがあったおかげで、留学生同士は全員仲良くなったのですが、娘にとって悩みの種はアメリカ人学生となかなか仲良くなれないことだったんです。
コロナ禍が始まる前、たった半年間だったけど、ルームメイトのアメリカ人とはもちろん親しくなったし、アメリカ人は基本的にフレンドリーなので、表面上は仲良くないわけじゃありません。
でも、 「本当の友達」と言えるような関係にはなれないそう。
そもそも、留学生と親しくなろうと思うアメリカ人が少ない。
そしてアメリカ人同士でも、実は目に見えない壁がある。
たとえば食堂1つとっても、体育会系の学生は古くからある方のスペースを使い、それ以外の学生は新しく改装された方のスペースを使うなど、自然と行動圏が分かれている。
アメリカ人の中でも暗黙の棲み分けがあって、より同質の学生としか付き合わないようなのです。
広大なアメリカでは、地域によって人種構成に偏りがあり、経済格差も大きい。
大国だからこそ内側ではっきり社会が分かれていて、だから新しい場所での人付き合いの仕方もその延長にあるだけなんでしょうね。
これは日本もその他の国も、結局みんな同じなのかもしれません。
アメリカ人は約束を守らない?
そのため、娘がアメリカ人学生と気が合うことがあっても、
「インスタやってる?
私のアカウントフォローして、私もフォロバするから。」
と言われて終了。
友達じゃなくて、フォロワーの1人でしかありません。
また、こんなこともよくあったようでした。
授業などでアメリカ人学生と仲良くなって、カフェでお茶をしながらおしゃべりした後、
「あさって、またここで会おうか?」
「じゃあ同じ時間にね!」
と約束したとします。
当日、まず来ない。
娘が一方的に誘っているわけでなく、お互いに意気投合して決めたことなのに、守られないことがほとんどなんだそう。
この約束をすっぽかされるというのは、学生にだけでなく教授にという場合もあったそうで、娘はいよいよ悩んでしまいました。
自分に問題がある?
日本人だから軽視されてる?
アメリカ人は約束を守らないもの?
1つ考えられるのは、コロナはアジア人が持ち込んだものとして、アジア人が蔑視される風潮があったことです。
はたして、これもそのせいなのかどうか。
「どうしたらいいと思う?」
と娘にLINE通話で相談されて、私も困ってしまいました。
そう言われても現地のことはまったくわからないので、
「入試担当者の人に聞いてみたら?」
と提案。
そこで、娘がホストファミリーでもある入試担当者の方に相談してみたところ、
「うーん、差別されてるわけではないと思う。
一人一人確認してみた方がいい。」
と言われたそうです。
はっきりした理由や解決策は、見つかりませんでした。
アメリカに住んで6年目になる今は、
「アメリカ人ってそうなんだよ。」
って言います。
留学生だからじゃなくアメリカ人同士でも、そんなことは日常茶飯事。
でも、このことをきっかけに、娘はあることを始めることになりました。
アメリカ人学生に、留学生の存在をもっと知ってもらうための活動をしていくことにしたんです。