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メキシコでびっくりした!? (カルチャーショック#4: 「Ahorita(アオリータ)」とは)

今回は、メキシコ人に「Ahorita」と言われた時の気まずさをどうすればいいかと未だに悩むほどのカルチャーショックをスペイン語の説明もしながら、ちょっとしたその表現の理由、そしてこう言われた時の面白い言い返しを紹介しようかと思います。

1.「Ahorita 」、理論的説明
「Ahorita」は、本来「Ahora」から来ている言葉で「今」という意味です。じゃあ、最後に付ける「ita」は何指しているのかというと、これは小さい物事の接尾辞なんです。例えば、猫はGato(ガト)というけれど、小さい猫、あるいは子猫のことをGatito(ガティート)と言います。

・アヒル Pato → Patito 🦆
・花 Flor → Florecita 
☆スペイン語の各名詞に性別があるので、女性形であれば「ita」、男性形は「ito」となります。Florのように最後に母音がない例外もあるのでそこは注意してくださいね。

この接尾辞を使って、形や使いみちが近い物を指すときもあります。
・車 Carro(カーロ) → Carrito(カリート) 🚘
Carritoはお買い物カート🛒にも使われているので、いつも小さい車という意味ではありません。
・ドーナツ Dona → Donita 🍩
Donitaもサイズが小さいドーナツのことなんですが、髪の毛を結ぶシュシュのことでもあります。

そして、この接尾辞を使って成り立った言葉もあります。
・Burrito 🌯(ブリトー) 
逆に接尾辞がないとBurro 、ロバという意味になります。

ということは、「Ahorita」は「今」よりもっと小さい、短いタイミングのことなので、「今すぐに」とでも翻訳できたりしますが、メキシコ人にとっては全く違う意味があります。

2.メキシコ人の「Ahorita」
ここまでの説明が台無しになるくらいメキシコ人の「Ahorita」の意味はとても紛らわしいものなんです。なので、色々なシチュエーションを想像して、まずはこの紛らわしさを分かってもらいたいなと思います。

メキシコ人の友達と会う約束をしたとしましょう。あなたは待ち合わせ場所に約束時間の10分か5分前につくとします。約束時間になってもまだ友達が来ませんが、5分ぐらい待っていると「Ahorita llego」とメッセージがきます。
さて、ここからが本題、上の説明に基づいた翻訳だと「もうそろそろ着くよ」という内容だと思えばいいですが、メキシコ人からくる「Ahorita」はそういう意味ではないかもしれません。じゃあ、あと5分か10分ぐらい待たないといけない意味なのか、そうでもないのです。30分あるいは2時間、3時間、4時間と、待たされるかもしれないのです。

今度は、メキシコ人と仕事をしているとしましょう。一緒にプロジェクトをすることになって、今日中にレポートを提出しなきゃいけないとします。そのレポートはみんなが書くものなので、メキシコ人にレポートを書いたかと聞いて、まだだとその上「Ahorita te lo envío」とも言われます。
その「Ahorita」、「今送るね」という意味なので安心していたら、そのレポートを提出されるのは、明日かもしれないのです・・・。

と、メキシコ人の「Ahorita」は本来の意味から離れた使い方をしているのです。逆に「Ahora」と接尾辞がないほうが「今すぐに」という意味を持っているのです。

3.メキシコ人の中でも「Ahorita」は複雑な存在
よく日本人の方からどうしてメキシコ人はそんな呑気に「Ahorita 」と言うのかと聞かれて、メキシコにまだ慣れていない私は上手く答えられませんでした。そこで今までの経験と考えたことでこの「Ahorita」を言う理由を解説したいと思います。

メキシコシティに住んでいると分かることだと思いますが、都会暮らしはじつに呑気ではないのことを。心配性な人が少ないかもしれませんが、メキシコ人は働き者で朝から晩まで頑張っているのです(朝の8時ぐらいから午後6時、10時間ぐらいの就労時間)。膨大な時間があるとやることも増えてしまい、集中力も続かないことでしょう。大学も最後の授業で午後6時から8時までのものもありますから、毎日が大変疲れることが当たり前なのです。そんな忙しい中だと精神的にも「Ahorita」と言って、明日仕事を提出するほうがましなのかもしれません。

メキシコシティで働いている、学校に通っているとしても、みんなシティに住んでいるわけではありません。1時間、中には3時間もかけてシティに行き来する人も多くいます。となると、交通機関が重要になりますが、メキシコの交通機関は安くて都合がよくても、メトロやバス、時間割なしで走っているので遅くなってしまうことがよくあります。もし、そのメキシコ人の友達がシティに住んでいなかったら、待ち合わせ時間に間に合わない理由を交通機関のせいと考えておいたほうがいいでしょう。

もう一つの理由は、上で話したスペイン語の説明で言わなかったことなんですが、論理的な説明では分かってもらえないことです。それは、この接尾辞を使うときに表している気持ちです。優しく言っているという気持ちです。小さい物は、可愛いらしいものと関連しているので、「Ahorita」もそのような気持ちを表しているのです。日本語だと敬語でも「ね」「よ」と語尾を付けて敬語の話し方を和らげるように、スペイン語でも可愛らしさと連想して優しく言っているつもりなんです。

そんなメキシコ人、「Ahorita」と言われたら本当は困る時もあるんです。意味が真逆だと分かっていても、時間を守れないと不都合な時だってあるからです。仕事場やプロジェクトでもよくあることだと思いますが、そんな時に面白い言い返しがあるんです。
「Ahorita」と言われたら、「Eso era para ayer!(エソ・エラ・パラ・アジェール)」と答えるんです。宿題や提出日が今日であっても、「それは昨日のためだったんだよ!」と言うんです。通常、「Para(のため)」は未来の出来事や期待されていることと使われるので、過去のことを指して、その違和感で「疾っくの疾うに遅いよ」と強調している表現です。

これで少しでも「Ahorita」と言いたくなる気持ちを分かってもらえたでしょうか。日本社会も毎日忙しくて疲れる中で「Ahorita」と言いたくなるときもあると思います。

また次回のカルチャーショックエピソードを楽しみに待ってくださいね~!

【投稿写真について。Guanajuato (グアナファト)州のAlhóndiga de Granaditas (アロンディガ・デ・グラナディータス)というメキシコ独立戦争の舞台になった建物です。中は、立派な博物館になっているのでメキシコの歴史に興味を持っている人は是非訪ねてみてください。】

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