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PPMを活用したエコシステム経営 〜短期最適化が引き起こす崩壊と持続可能な成長戦略〜
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を活用したエフェクチュエーション:複数ビジネスを同時に成長させる戦略
1. はじめに
企業経営において、新規事業を創出しながら成長を続けることは大きな挑戦です。特に、資本力が限られている企業やスタートアップにとって、単独の事業だけに投資するのではなく、複数の事業を並行して運営し、相互に支え合うことで成長を促進することが有効な戦略となる場合があります。
私自身、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)のフレームワークを活用し、「金のなる木」から「スター」や「問題児」へと資金供給を行うことで、新規事業を育てる手法を実践してきました。本記事では、この手法についての考え方や、その限界について詳しく解説します。
2. PPMとは? 4象限の基本概念
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、「市場成長率」と「市場シェア」の2軸で事業を分類し、資源配分を最適化するためのフレームワークです。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱し、多くの企業が事業戦略の指針として活用してきました。
PPMの4象限
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3. PPMを活用したエフェクチュエーションとは?
エフェクチュエーションとは、未来を予測して計画的に動くのではなく、手元のリソースを活用しながら柔軟に進める起業家的アプローチのことです。
PPMのフレームワークを活用しながら、資本力の限られた企業が新規事業を育成する際には、以下の戦略が有効です。
1. 複数の事業を「1つのポートフォリオ」として考える
• 複数の事業を相互に支え合うエコシステムとして管理し、事業間で資金やリソースを流動的に動かす。
2. 「金のなる木」を活用して、新規事業を育成
• 既存の安定した収益源(キャッシュ・カウ)を活用し、将来的に成長が見込まれる事業(スターや問題児)への投資を行う。
3. 「問題児」に選択と集中を行い、「スター」に育てる
• 市場の動向や自社の強みを考慮し、成長の可能性が高い事業にフォーカスする。
• 成長市場でうまくシェアを拡大できれば、「スター」から「金のなる木」へと移行する。
4. 経営者の課題:PPMの視点を無視した業務スリム化が引き起こす「エコシステムの崩壊」
ここまで述べてきたように、PPMのフレームワークを活用し、複数のビジネスをエコシステムとして捉えることで、新規事業の成長と持続可能な経営を実現してきました。しかし、実際の経営においては、この戦略が機能しなくなる局面が訪れることがあります。
私自身、PPMを活用しながら「金のなる木」から「スター」や「問題児」へ資金供給を行うことでエコシステムを維持してきましたが、「業務スリム化」の命令によってこのエコシステムが崩壊する事態に直面しました。
PPMの視点が欠如すると、なぜエコシステムが崩れるのか?
PPMでは、事業の収益性を「単体」ではなく、「全体のバランス」で考えることが重要です。しかし、短期的なコスト削減を目的とした「業務スリム化」の方針のもとでは、これらの事業の相互関係を無視し、単体の売上や利益の評価基準だけで判断されるようになります。
その結果:
• 「問題児」への投資が止まり、成長が見込めなくなった。
• 「スター」の事業が十分なリソースを確保できず、競争力を失った。
• 「金のなる木」に過度な圧縮が行われ、全体の収益バランスが崩れた。
5. 鳥の目で俯瞰する経営:PPMの4象限を活かした持続可能なエコシステム構築
企業経営においては、事業の細分化による収支構造の管理は重要ですが、それだけでは不十分です。
大局的にビジネスを捉え、「鳥の目」で俯瞰することで、PPMの4象限によるエコシステムの全体像が見えてきます。
経営者が取るべき視点
1. 短期的なコスト削減だけでなく、長期的な事業ポートフォリオを考える
2. 事業の相互作用(シナジー)を評価し、単体の売上ではなくエコシステム全体の価値を考える
3. リソース配分を戦略的に考え、エコシステム全体の持続可能性を高める
6. まとめ:PPMを活用した持続可能な成長戦略
PPMのフレームワークを用いることで、企業は単独の事業だけに依存せず、「金のなる木」から「スター」や「問題児」に資源を適切に配分しながら成長を続けることができます。
もっと俯瞰で組織全体のPPMの視点が必要ということになります。
短期的な最適化と長期的な成長のバランスを取ることは難しい課題ですが、PPMを活用しながら持続可能なビジネスモデルを構築することこそが、未来の成功につながる鍵となるのです。