レジリエンスと逆境指数逆境を乗り越えるために重要なのは目標設定・・・事例『逆境のトリセツ』
今回のブログでは、ビジネスの新規事業、スタートアップだけでなく生活面など様々な場面で直面する“逆境”。この“逆境”を乗り越える方法について、レジリエンス、AQ(逆境指数)、RQ(回復力指数)について解説し、これらの理論を事例として、私の著書『逆境のトリセツ』にどのように反映されているかについて触れていきます。
第一部:レジリエンスとAQ/RQの基本
■レジリエンスとは
逆境に直面した際に適応し、回復する能力です。心理学者アン・マステンはこれを“暮らしに宿る魔法の力”と称し(訳され)、特別な力ではなく、誰もが持つ潜在的な力であると述べています。この力は、適切な支援と環境があれば誰にでも発揮されるものです。
■AQ(Adversity Quotient・逆境指数)とは
AQは、逆境に対する個人の持続的な反応を測る指標で、米国ハーバード・ビジネススクール客員教授のポール・G・ストルツ(Paul G. Stoltz)が提唱しました。
※現代のビジネスマンは、否応なく日々さまざまな“逆境”と対峙しながら生きています。AQ(逆境指数)は、大きな悲劇から小さな怒りまで、あらゆる種類、レベルの“逆境”に対応するために、あなた自身に組み込まれた行動パターンを示します。
■AQ四要素とは
1.コントロール:逆境をどれだけ制御できると感じるか
2.責任:逆境に対してどれだけ責任を感じるか
3.影響の範囲:逆境が人生の他の部分にどれだけ影響するか
4.持続時間:逆境がどれだけ長く続くと感じるか
■AQのレベル5段階
レベル1 逃避(Escape)……逆境に立ち向かえず逃げようとする
レベル2 サバイブ(Survive)……なんとか生き残ろうとする
レベル3 対処(Cope)……とりあえず対処をする
レベル4 管理(Manage)……逆境をなんとか管理し解決しようとする
レベル5 滋養(Harness)……ピンチをチャンスにし、逆境を栄養源としてさらなる飛躍を目指す
(出典:人事用語集)
■RQ(Resilience Quotient・心の弾力性・回復力)とは
RQとは、逆境やストレスからどれだけ迅速に回復できるかを表す指標で、高いRQを持つ人は逆境に対して柔軟に対応し、迅速に日常生活に戻ることができます。
第二部:著書『逆境のトリセツ』
著書『逆境のトリセツ』とは、著者谷口正典・益村泉月珠 右足と脳機能を失っても、挑戦し続ければ道は開ける。 人生の目標を実現していく、夫婦の起死回生ストーリー。 突然の事故、右足切断、記憶障がい、脳機能の低下。
途方もない試練を乗り越える裏には、小さな気づきと大きな愛情があった。 パラスポーツ挑戦、CM出演を果たし、義足タレントとして羽ばたいていく――。 夢を見つけ夢を掴む姿を描いた、試行錯誤の記録。
私の著書『逆境のトリセツ』内で、レジリエンス・AQ・RQの概念を実生活の中でどのように活用できるかを具体的に紹介します。
障がいを持つ夫の介護を通じて、私は逆境に直面する毎日の中でレジリエンスを発揮しました。 これには、日々の困難を乗り越えるためのコントロールとオーナーシップ、困難が我が家全体に及ばないようリーチを制限する戦略が含まれています。 さらに、逆境がどれだけ長く続くか(エンデュランス)に対しても、一時的なものと捉え、前向きな姿勢を保つことで、精神的な回復力(RQ)を高めています。
義足モデルとしての挑戦 レジリエンス、AQ、RQを活用した逆境の乗り越え方
私の夫が義足モデルとして活躍することを目標にし、どのようにして逆境を乗り越えてきたのかをお話します。 レジリエンス、逆境指数(AQ)、回復力指数(RQ)の概念を大切に、彼の挑戦を深く掘り下げます。
■レジリエンス
私の夫は、事故により右足大腿部から切断しました。その後義足を使い始め、高次機能障がいということが判明しました。彼は自分の障がいを公開し、義足モデルとして活躍することを目標にしました。この決断は、逆境により自分自身を自覚し、強みを再発見し、新たな意味を見出すレジリエンスの典型的な例です。夫は障がいを隠すのではなく、それを力に変え、他人にインスピレーションを与える義足モデルとなっています。
■AQ(Adversity Quotient・逆境指数)と『逆境のトリセツ』
1.コントロール:逆境をどれだけ制御できると感じるか 義足という新しい身体の一部を受け入れることで、夫は自分の生活を再びコントロール下に置きました。障がいの受容を促進し、義足モデルとして、新たな人生の舞台を歩んでいます。
2.責任:逆境に対してどれだけ責任を感じるか 夫は自分の状況に対して完全な責任を認識し、義足モデルとしての役割を積極的に受け入れました。彼は自分のキャリアを自分のものとしてすべてし、それを社会的に積極的に示しています。
3.影響の範囲:逆境が人生の他の部分にどれだけ影響するか 夫の活動は個人的な活動にとどまらず、社会的な認識に影響を及ぼしています。東京オリンピック・パラリンピックの開会式や閉会式に義足モデルとしてキャストとして出演し、新たな可能性を示しました。
4.持続時間:逆境がどれだけ長く続くと感じるか 夫の右足切断や高次機能障がいは、治ることはありません。長期的な視点を考えると、右足義足を受け入れ、高次機能障がいの症状が現れないように予防行動をすることで、継続的に社会生活を送れる工夫をしています。これは、逆境の持続にも耐えうる強い精神性を表しています。
■RQ(Resilience Quotient・心の弾力性・回復力)と『逆境のトリセツ』
自覚をして受け入れることが出来たときから、予防行動を夫婦で考え、ルール設定をしました。そうすることで、夫は新しい社会的役割としてのモデル業として社会復帰していくことができました。彼は、障がいという治らない困難な状況を心の弾力性で受け入れ、別の形で社会復帰という回復を加速させました。
第三部:目標設定の重要性
目標設定は、レジリエンス、AQ、RQを高める上で非常に重要です。明確な目標を持つことで、逆境に直面したときのコントロール感が増し、困難な状況を乗り越える動機付けにもなります。私の夫が義足モデルとして活躍することを目指した事例は、目標がいかに人を動かし、逆境を乗り越える力に変えるかを示す事例です。
レジリエンス、AQ、RQはただの理論ではなく、私たちが日々直面する困難を乗り越えるための実践的なツールです。『逆境のトリセツ』を通じて、これらの概念を生活にどのように応用できるかを理解し、皆さん自身の挑戦に役立てていただければ幸いです。どんな困難も、適切な心構えと目標設定によって、新しい可能性へと変わり得るのです。
谷口正典note
https://note.com/masa0331
「逆境のトリセツ」は、パラスポーツ選手・義足モデルの谷口正典と妻のストーリーを描いた小説。逆境を乗り越え夢を実現する姿が感動的。価格は1430円(税込)、判型は4-6・192ページ。