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不動産業界における「一括査定」とは

「一括査定」の説明

不動産業界には「一括査定」という習慣があります。これ自体が悪いわけではありませんが、その仕組みが必ずしも顧客にとって最良の価値を提供しているとは言い難いのです。

一括査定とは、所有する不動産の情報を入力して、複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるウェブサービスのことを指します。車の査定でも同様のサービスがあります。一見すると、多くの会社に簡単に依頼できるという点で大きなメリットがあるように感じられます。

また、このサービスは基本的に無料で、査定に不満があれば契約する必要もありません。そのため、「自分の不動産はどれくらいの価値があるのか?」と気軽に知ることができます。最近ではAI査定も登場し、人を介さずに相場を知ることができます。

しかしながら、大きなメリットがあルように感じられて、無料であるがゆえの落とし穴も存在します。

不動産一括査定の手順

手順は非常にシンプルです。一般的な入力フォームを使用するため、難しくありません。

  1. サービス提供ウェブサイトを訪問

  2. 所有している物件情報を入力

  3. 連絡先情報(電話番号やメールアドレスなど)を入力

必要な物件情報には、土地面積(戸建てや土地の場合)、建物面積(マンションの場合は専有面積)、住所・部屋番号、築年数、構造などがあります。契約書などの資料を手元に用意してから登録することをお勧めします。これらの情報を基に、不動産会社は物件の価格を計算します。査定結果は「当社にお任せいただければ、この価格で売却可能です」といった形で提示されます。

査定の種類「机上査定」と「訪問査定」

不動産の査定には主に2種類があります。

  1. 机上査定(簡易査定): 過去のデータや現在販売中の近隣物件情報から金額を算出する方法です。物件には訪れず、入力情報に基づいて査定します。査定価格が算出されるまでの所要時間は、早いと1日、遅くとも3日以内が平均的です。現地調査が無いため、物件の管理方法や環境の影響を考慮できない場合があります。

  2. 訪問査定(実査定): 不動産会社の担当者が実際に物件を訪れ、詳細な査定価格を出します。基本的に机上査定に加えて、物件の状態を確認します。訪問査定では、営業マンが仕事を取るために様々な手法を使うことがあり、相談者が惑わされることがあります。

不動産一括査定のデメリット

不動産一括査定にはいくつかのデメリットがあります。

  1. 査定価格=売買価格の保証はない: 一括査定の金額は不動産買取ではなく仲介を想定しており、最終的な売買価格の保証ではありません。これは相談者を混乱させる要因です。不動産営業のできることは、売主の希望価格に対してアドバイスをするだけであり、「この金額で必ず売れます」という営業マンがいますが、それは言ってはいけない台詞です。

  2. 各社で査定額が異なり、相場がわかりにくい: 複数の不動産会社に依頼すると査定額が異なるため、実際の相場がわかりにくくなります。媒介契約を取得したい会社が高めの査定金額を出しますので、余計に相談者の判断基準がズレます。

  3. 査定依頼できるのは登録している不動産会社に限る: 一括査定サイトに登録している不動産会社にしか依頼できないため、資金力のある大手不動産会社が有利です。地場に強い不動産業者なども存在しますが、その競争に参加しにくいです。

  4. 営業の電話がかかってくる可能性がある: 一括査定サイトで連絡先を入力すると、不動産会社からの営業電話がかかってきます。査定依頼は契約を強制されるものではないですが、現地もいかず、その場で営業をしてくる営業マンもいます。

一般的に、大手不動産営業マンの仕事は媒介契約の獲得です。ここにノルマが引かれています。よって、高値でも獲得を目的に取得を目指す営業マンが存在します。

まとめ

顧客が、これらのデメリットを回避するためには、一括査定サイトだけに頼らず、適切なサポートを提供している不動産会社を選ぶことが重要になってきます。また、査定結果には注意し、複数の手段を併用して査定を行うことが賢明になります。

繰り返しになりますが、査定価格=売却価格の確約ではありません。一括査定の金額は通常、不動産仲介を前提としています。不動産仲介では購入希望者が物件を見学し、価格交渉が行われるため、査定結果がそのまま売却価格に反映されることは少ないです。この辺りは顧客にしっかりと伝える必要があります。

顧客は、不動産会社の話を鵜呑みにせず、SUUMOやネットで売却相場を事前に調査し、大まかな目安を知っておくことが重要です。ネットだけでなく、国土交通省の土地総合情報システムや国税庁の路線価図・評価倍率表、不動産流通機構のREINS Market Information、全国地価マップなども活用して、本来の相場というものを顧客に理解して頂く必要があります。

査定額やサービスだけでなく、実際の案内時に営業マンはどのように対応してくれるのか、販売期間中のやり取りはどのようにするのか、販売計画をお伝えしましょう。不動産売却とはお客様と共同で行うものです。

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