ヘアドネーション 、病気が教えてくれたこと
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うーん。短い髪も悪くないな。
私は、鏡に映ったボブスタイルの自分を見て思った。
髪の毛を31CM切り、ロングヘアーが、すっかり短くなった。
切る前の髪の長さは、胸までありました。
ここまで長いと、シャンプー、ドライヤーで乾かすのも大変です。
手入れに時間がかかり、いやになります。
わずらわしさに、断念して切ろうかと思った事もありました。
しかし、そこまで伸ばしたのは、理由があったのです。
それは、ヘアドネーションをするためなのです。
ある日いつも行く、美容院の美容師さんの髪形が変わっていました。
「なんでそんなに短くしたの?」と聞いたら、
「ヘアドネーション、知っていますか? 寄付した髪で、病気で髪の毛がない子供にかつらを作るんですよ」と教えてくれました。
美容師さんは、かなり髪の毛が、短くなっていました。
そして、へー! 自分の髪が役に立つなら、やりたいと思いました。
誰かを助けたい。そう思って髪の毛を寄付したのです。
ロングヘアーが短くなったので、周りが随分驚きました。
私は「ヘアドネーション、知っていますか?」と周りに話していました。
そんな時、友達から来たメールに驚きました。
「実は、がんが見つかり、治療をはじめた……」
すぐに理解出来ず、一瞬頭の中が、真っ白になりました。
友達の病気が発覚した直後に、私がヘアドネーションをしていました。
私の心意気に元気が出て、
「そういう応援の仕方もあるんだなと思って。頑張るね」
と胸のうちを、話してくれました。
その友達とは、共通の趣味「走る」ことで知り合いました。
走る仲間の1人で、一緒に山に走りに行っていました。
いつも一緒にいたわけでは、ありません。
そんな私に、自分の病気の事を話してくれたのです。
打ち明けるのは、随分勇気が必要だったはずです。
友達を応援したい。
その気持ちが、強くなりました。
私は心配で、友達によく連絡していました。
友達はごく親しい人にしか、病気の事を伝えていません。
仲間とのオンラインのZOOM会には、誘っても参加してくれませんでした。
やはり、「最近どうしているの?」という話しになるから、嫌だよな。
周りが走っている事を話す中、自分は走れない。その理由も言えない。
そりゃ、参加したくなくなるよな。
友達の気持ちを思うと、なんて声をかけたらいいのか、分かりませんでした。
私の言葉は、彼女の応援になるのか?
病気でない私がかけた言葉は、薄っぺらいものでしかないと思ったからです。
友達は、抗がん剤治療をはじめ、体調不良が続いていました。
治療は、想像していたよりも、はるかに心と体を、乱していきます。
また走れるようになろうという事は、にのつぎです。
早く手術して、体からがんを追い出したい。
手術のために、入院して、同室の患者さんとの交流で、気持ちが変化します。
同じ部屋の一番病状が進んでいる人から、言われた事でした。
「話すのは、自分からつらい事を放すという事。弱音を我慢せずに、吐き出してつらい気持ちを手放そう」
同室のみんなで、つらい事を言い合うと、つらい事は笑いに変わっていました。
心が軽くなり、気持ちが前向きに、変化していきました。
手術後、フェイスブックに病気と闘病生活を公開しました。
手術が成功した事で、一区切りがついたからかもしれません。
公開した理由は、あきらめない気持ちを、他の人に伝えたかったから。
病気で悩む人、本人やその友達に、アドバイスが出来るからという事でした。
手術した後のリハビリは、歩く事からはじめた。
エスカレーターは、使いません。
すっかり筋肉がなくなった足を、鍛えるためです。
そんな努力のかいがあり、ゆっくり走る事が出来るようになりました。
自分の走れる距離を走った。と話す笑顔が忘れられません。
山に登ったと聞いた時には、驚きました。
私は、友達の心の強さを、尊敬しています。
友達は、ヘアドネーションをした私だから、病気を告白してくれました。
ヘアドネーションは誰かを応援する事だと思っていた私は、困難な事があってもあきらめない姿勢に逆に励まされたのです。
友達は、病気になって、絶望した。
真っ暗な闇の中を、進んでいくようだったと。
生きたい。また走れるようになって、みんなの元に戻ってきたい。
手術が成功した事、同じ病気をもっている人と交流できた事が、転機となりました。
気持ちが前向きに変わり、光が差し込んだように感じ、このまま進んでいこうと思ったと言っていました。
病気は、絶望と希望を経験させた。
起こったことには、全て意味がある。
これも人生経験の一つで、経験値UPだというのです。
つらい事があった時、友達も頑張っているから、私も頑張ろうと思えました。
治ると信じて、あきらめないで前を向いて生きていこうという事。
病気に負けないという思いは、こんなに心が強くなるのかと思いました。
もし、自分が病気になったら……
こんなに強くいられるだろうか?
秋には、一緒にマラソンの大会にでます。
私は友達から、諦めない前向きな気持ちという、ギフトをもらいました。
今度は、私が恩返しをしていく番です。
これからも、たくさんの景色を一緒に見て、走ろうね!