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犬がいなくなった
※犬が亡くなる話なので、悲しくなってしまう方は読むのをおすすめしません。
犬がわたしの生活からいなくなってしまった。
わたしのベストフレンドでもあり、頑固な妹(姉?)でもあり、かわいいベイビーでもあった犬。バンクーバーに住んで6年中の3年も一緒に暮らして、言葉通りいつも一緒だった。
今は言葉通りmy better half(わたしの相方)がいなくなってしまったという感じで、心にぽっかり穴が空いている。
1ヶ月少し前から、左の前足をひきずり出して獣医さんにいったら「年齢もあるから関節痛などかもしれない」とのことで痛み止めを1週間与えて、調子が良くなってきたと思ったら、左の後ろ足をひきずり出した。獣医へ再度訪れてどこの関節や筋が痛むのかを診てもらったが「彼女は強いね、全然痛がらない」とのことで、原因がわからないのでレントゲンを撮ってもらうことにした。ドクターがレントゲン写真を全部送ってくれて「彼女の体内に弾丸がある」と電話で説明をしてくれた。そして「首と胸に腫瘍があって、胸に水が溜まっている」とも。
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彼女はなんせイランからやってきたのだ。銃で打たれても、妊娠して子犬を取り上げられても、ケージに入れられて何時間も飛行機に乗せられても、強く強く生きてバンクーバーにやってきた。わたしたちに会って、愛されるために強く生きてきたのだと思う。
そして翌週には、彼女の腫瘍の細胞を採取してラボに送り、超音波検査をしたうえで彼女の胸に溜まった水を抜いてもらった。水だと思っていたものはほとんど血で、胸の腫瘍から血が滲んだものが溜まっているのだろう、とのことだった。それから辛そうに呼吸をするようになり、夜中にも獣医へ行った。いつもとは違う先生がまた血を抜いてくれて「腫瘍の細胞の検査結果からは癌細胞が(たまたま)見つからなかったけど、これまでの報告と今の状況を見て癌だと思う」と言われた。そして彼女の胸から抜いた血を再度検査することにした。
もともと犬を養子にしたパートナーはその日パニックになってしまい、家に帰ってから「もう安楽死させよう」と言い出して、検査結果が明確に出てもいないのになんてネガティブなんだろうと、わたしは静かに怒り狂った。犬をきっかけに仲良くなったのに、犬をきっかけに離れることになるかもしれないと思うほどショックな言葉だった。
彼女の胸から抜いた血の検査結果が出る日まで数日、毎日祈りながら過ごしていた。寝ているときに呼吸がおかしければ飛び起きて体制を変えたり、ベッドに運んで一緒に寝たり。寝ているのに寝ていない数日間で、こちらの体力も気力もだいぶ失われかけていた。そしてその日の早朝、パートナーが「呼吸がおかしすぎる!獣医に行く!」と言って出ていった。胸に溜まっている血がどんどん濃く粘着質になっているらしく、今行っている獣医では取り除ききれないとのことで、専門家がいる病院を勧められた。簡易テストと血の除去で1000ドル(11万円ほど)、精密検査に6000〜7000ドル(66〜77万)、そこから治療をするとしたら更にお金がかかるとのことだった。
このときで、犬はまだ9歳ほど。実家で飼っていた犬は12歳ほどまで生きたので、あまりにも短すぎるし、この1ヶ月がジェットコースターのようだったので、専門家に行くことを諦めるのが本当に辛かった。その反面、苦しそうに呼吸をしている犬を見守るのも、いつ起こるかわからない呼吸不全や心臓発作を待つのも辛かった。
そして、わたしたちは安楽死させることを決めた。でもいつ?呼吸は苦しそうだけど、今しがた一緒に散歩に行ったばかりで彼女はいつものように尻尾を高く上げ、時々わたしたちがいるか振り返って確認をしながら楽しそうに歩いていた。でももう食事もあまり摂りたがらず、呼吸は浅い。獣医さんからもらった、家で犬を看取れるサービスをしている会社やドクターを調べて、とりあえず夕飯を食べ始めた。そのとき、彼女の呼吸がいつもより辛そうになり始めた。もうそこからの30分は一瞬ごとに写真を撮ったかのように今でも鮮明でありつつ、ほんの一瞬だった。パートナーが電話をし、犬を家で看取れるサービスの人が家に15分もせず到着し、施術され、10分せずに犬はわたしとパートナーの膝の上で静かに亡くなった。いつも散歩に行くまで我慢してくれて一度も家でおしっこを漏らしたことがなかったので、初めて彼女のおしっこを拭いた。これは筋肉の弛緩によるもの。
その日、安楽死の話を始めてから、彼女はなにかを悟ってずっと不安そうな顔をしていた。不安そうな顔で横に来て、不安そうな顔で「撫でて」と胸を見せてくれた、不安そうにわたしたちをずっと目で追っていた。犬はとにかく賢くて共感性が高い。
久しぶりに声をあげて泣いたし、なにかあるごとに涙が出てくるし、彼女がいつもいた場所を見ては泣けるし、彼女のかわいい表情や手触りを思い出しては、本当にもうここに物理的にいないんだということを実感して悲しくなる。起きてすぐ、近くにいないことを実感して泣いた。いつもわたしの様子を見にきてくれるときに聞こえる、彼女の爪がフローリングにあたるチャッチャッチャッという音が聞こえてこない。寝る前に、いつも口をくちゃくちゃ鳴らす音が聞こえない。昨日からそのままになっている犬の水のボウル。彼女のお気に入りのブランケットはまだほんのり彼女のにおいがする。すべてが悲しい。わたしには彼女が必要なのに、どこにもいない。誰も埋めることのできない穴がある。
ここまで冷静に書いたけど、人目を気にせず今の気持ちを書くと、やだやだやだ!!なんでいないの?いつも一緒にいたじゃん、いないと寂しいよ。いなくなるの、あまりにも早すぎるよ。いつも途中で撫で疲れていたけど、おなかももっと撫でるから帰ってきてよ。眠るまで頭も撫でるよ。おいしいごはんやおやつも買うから一緒にソファやベッドでごろごろしようよ。散歩から帰ったらいつもみたいにわたしの居場所を最初にチェックしに来てよ。今までどおりたくさんたくさん大事にするから、どうかどうか近くにいてよ。
という気持ちと、わかってる。天国で家族に会えてきっと幸せだよね。わたしたちにたくさん愛されて、幸せだったよね。わたしたち最強で最高にかわいくて幸せな家族だったよね。たくさん苦しむ前にわたしたちの膝の上で眠れてよかったよね。いつもわたしたちを観察して守ってくれていたように、今も天国からそうしてくれているって信じてるよ。本当にたくさんのラブとサポートをくれてありがとう。おもしろくて、辛抱強くて、頑固で、大人で、ベイビーで、最高にかわいい犬だよ。これからもずっと大好きだよ。
という気持ちが毎時間、毎分のようにめまぐるしくわたしの中を駆け巡っていて、要は不安定だ。この気持ちを消化するにはもう少し時間が必要そうだけど、犬からもらったたくさんの愛がそれを助けてくれると信じている。
実際にこの文章を書くことでかなり気持ちが落ち着いた。
犬のことを察知して連絡をくれたお友達、本当に本当にありがとうございます。ひとつひとつのメッセージが温かくて嬉しくて、読む度に泣きました。
Peppi, I love you so much. You are the best. I always feel your love and support. Take a rest well and enjoy with your family for a while, but I believe we will meet again somehow.
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