見出し画像

中書島の炎ー三栖神社炬火祭

宇治からほど近い京都市伏見区中書島。
京阪電車の中書島駅からほど近い三栖神社は、天武天皇を祭神とした小さな古い社で、普段は多くの参拝客で賑わう場所ではありません。
日本全国のどこの町や村にでもあるような、ごく普通の鎮守さまという風情の神社です。
しかし、年に一度だけ、この近辺に例外的に人が密集する夜があります。秋に行われる炬火祭(たいまつまつり)です。

京都の炎の祭りと言えば、清凉寺(嵯峨釈迦堂)のお松明式や、広河原の松上げ、鞍馬・由岐神社の火祭りなどが有名ですが、三栖神社の炬火祭にもそれらに決して劣らない迫力があります。
重さは約1トン、直径約1.2メートル、長さにして4~5メートルはあろうかという巨大な松明(たいまつ)。これは宇治川の岸辺に自生する葦を束ねて作られたものです。
その大松明に火がつけられ、およそ30人の男たちが掛け声とともに担ぎ上げながら伏見・中書島の町(竹田街道)を練り歩くのです。

大松明はみるみるうちに夜空高く燃え上がり、その炎は街道を横切る電線や道路標識、信号機などを、次々と舐めていきます。
「うわぁ、電線が焼け落ちる」
「大丈夫か、信号機焦げとるで」
そこかしこから、見物人のどよめきが聞こえます。
それでも、大松明はお構いなしに前進を続けます。そればかりか、ところどころで一回転してみせたりして、人々を一層ヤキモキさせるのです。

見物する者にもビンビンと大松明の熱が伝わり、その頬を赤く照らします。
炎上する松明を下から担いでいる男たちの熱さは相当なものでしょう。
夜闇に踊る炎の触手が今にも沿道の家々をも飲み込むかのように揺らめき、人々にハラハラとした緊張感が走る頃に、祭りの興奮は最高潮を迎えます。

そんな、伏見の奇祭・炬火祭が、今年(2024年)は10月13日の夜に執り行われました。
例年、10月の第2日曜の夜に行われることが多いです。
今のところは、まだまだ知名度の低い祭りですが、秋に京都伏見へお越しの際は、一度ご覧になっても損はないと思いますよ。

いいなと思ったら応援しよう!