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疲労は能力を低下させる!

以前、冬の富士山に登ったときのことを記事にしたことがあります。
今回は、あのときには書ききれなかったことを書きます。

あの富士登山の時期は11月の末近くで、6合目から上は雪が積もっていました。しかし、登った当日はほぼ無風で暖かく、積もった雪も全然固くなりませんでした。

我々は、それでもリーダーの指示通りにアイゼンを履いて登っていきましたが、アイゼンを履かないで登っているパーティーもありました。

どこかの大学の山岳部かワンダーフォーゲル部と思える数人のパーティーが、我々の少し先を登っていましたが、彼らはアイゼンを履いていませんでした。

そして、頂上の直ぐ真下、多分あと50m位で頂上という地点で、そのパーティーの一人が突然転倒して滑落したんです。

我々の目の先数メートルのところを、彼はもがきながらツーッと落ちていきました。

彼らのパーティから、「ザックを外せ!」という声がかかり、我々のリーダーも「ザックを外せ!」と叫んでいました。

滑落を止めるためには、身体を反転させて、ピッケルの頭部を雪面に突き立てなければなりません。身体を反転させるにはザックが邪魔になるんです。

彼は結構大きなザックを背負っていたので、まずこれを外して身軽にならなければなりません。
しかし、彼はザックを外そうともがきながら、そのままどんどん滑落していきました。

見ている間に、彼はずるずると滑落して、その人影もどんどん小さくなりました。
もうダメかなと思ったのですが、多分500m位落ちたと思われる地点で、幸運なことに止まったんです。

滑落していく途中で、岩のでっぱりにも当たっていたようだし、彼が全く無事だったかどうかは分かりません。

しかし、見ていると次には立ち上がったので、我々も「あ、生きてる」「良かったな」となったわけです。

我々のリーダーはこのとき、残りのメンバーに対して「どうする?怖くなったら下りるぞ!やめても良いぞ!」と声をかけました。
残りのメンバーと言っても、あと2人だけですし、彼は、主として私に向かって言ったんだろうと思います。

もし、私が「こわい」と言ったら、彼は本当に登頂を断念して下山したと思います。
でもあと50mですからね。
ここで下山する気にはなれませんでした。

私は「いや、行きます」と返事して、そのまま頂上まで登ることが出来ました。そして、しばらくして下山したという話は、前の記事の通りです。

その滑落した男性のことは何も知りませんが、滑落の原因の一つはアイゼンを履いていなかったこと。これはちょっとした油断でしょう。
そして、もう一つの原因は疲労だと思います。

滑落した男性だって、山岳部などに所属していたら、雪上訓練はしていたはずなので、疲れていなければ、途中で滑落を止めることが出来たと思います。

疲れていなければ、そもそも転ぶようなことはなかったと思います。

ほかのスポーツでも経験すると思いますが、疲労すると、人の能力は一段も二段も低くなります。
そして、登山の場合は、危険なことになりかねないということです。

仕事をしていても疲れると能率が悪くなるし、多分判断力も疲労に左右されると思います。
何事によらず、疲労は大敵なんでしょうね。


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