【鑑賞日記】フジモリ茶室を観に行った
フジモリ茶室(高過庵・空飛ぶ泥舟・低過庵)・神長官守矢史料館 @茅野市
建築家・藤森照信氏の名前を知ったのは路上観察額学会の存在と活動を知ったときのことです。そう思うとかなり昔から知っていたんだなあ、とちょっと驚きを感じていたりします。
そののちも、土や木や、そのほかさまざまな素材でのユニークな建築物をつくる建築家としてよく見かけるとともに、芸術祭でのサイトスペシフィックなインスタレーション作品の作家として出会う機会も多かったように記憶しています。
「パビリオン・トウキョウ2021」での茶室「五庵」もそうですし、あいちトリエンナーレ2013では「空飛ぶ泥舟」を観てきています。
ではあるのですが、茅野市にこのような作品群/施設があるということは寡聞にして知りませんでした。知ったからには行かずばなるまい。
神長官守矢史料館は外見的にも内部的にも面白いつくりで、いかにも藤森建築っぽいなあと思ったのですが、なんでもはじめてデザインした施設とのこと。はじめからブレてないなあ。
で、いよいよ今回のメインどころの3つの庵です。どれも”ヘンテコ”であると同時に根底にあるコンセプトをしっかりと体現しています。見た目重視のようでいて基本となる軸が見え隠れする。そんな建築だと感じました。
これら庵はワークショップで作成されたもので、いまは外部のみ常設展示となっています。たまに庵内に入る企画もやっているようですが、今回は外から眺めるだけ。それでも十分に見ごたえがあります。
まわりは原っぱや畑の風景。遠景には山々。夏の青空のもと、すんっとそこにある庵。存在感が半端ない。絵になるなあ、と思いました。
もうひとつ感じたのは、異形性です。
特に空飛ぶ泥船。支える柱が4本で、遠目、いや近目からみても、まるで映画に出てくるような異形の巨大な怪物のように感じました。
他の庵もそれぞれなんで? という形態でした。まあ、そこがいいんですけれど。
低過庵は、ぱっと見では黒塗りの小屋のようにしかみえないけれど、構造をよくよく見ると屋根がスライドして青天井になるとか、奇妙なギミックを内包しています。
実のところ、こんな建築物がなんで茅野に… と思いもしたのですが、過去に出会ったものは東京や名古屋といった街のなか。それはそれで面白かったのですが、今にして思えば、都市という人工空間ではどこか同質性があって際立つことが弱いように感じるのです。
その点、ここ茅野では自然の中に溶け込みつつも異彩を放つ存在として自己を主張している。それは異形の姿をもった土地神のようでもある。
そう考えると、だからこそここにあることが似つかわしい。そう思ったのでした。