年中無休のオクトーバーフェストに物申す ?!
春夏秋冬オクトーバーフェスト
オクトーバーフェストが日本各地で開催されるようになって久しい。一年中どこかでオクトーバーフェストが開かれているといっても過言ではない。
自分も、横浜赤レンガ倉庫のフェストには何度も訪れ、毎回楽しく過ごしている。まあ最近では人が多すぎてちょっと落ち着かない感もなきにしもあらずだが、それはそれとして。
かつては地ビール、今ではクラフトビールと名称(と品質)を変え、ミニブリュワリーのつくる多種多様で個性豊かなビールが飲めるのは実にありがたい時代になったなあと思うばかり。
オクトーバーフェストという名で一括りにしていいのか?
そんなオクトーバーフェスト、春夏秋冬どんな時期でも開催されるという状況は嬉しい反面、「オクトーバー」という名称が意味を成さなくなっている。
厳密には10月に開催するからその名になったわけでもないらしい。なにより楽しく飲めればどうだっていいよね。という日本人的アバウトさが発揮されている。いいことである。
さて、そんなビールのまつりは別にオクトーバーフェストの専売特許というわけではない。ドイツ由来であれば春の祭りのフリューイングフェストがあるし、ベルギービールウィークエンドだってある。
自分はビール好きだが、本当のところイギリスのエールのほうが(わずかの差だが)好みだったりする。だから、もっと各地のビール祭りがあってほしいと思う。
とはいうものの、だいたいにおいて、ビールイベントにオクトーバーを冠するという現状、わかりやすさからすれば仕方のないことなのか?
ビールが主役のイベントばかりが正解でいいのか?
実際にビールフェスに参加していつも思うのだ。
「ビールだけじゃ寂しくない?」
これを切実に思ったのは、鎌倉で開催されたオクトーバーフェストにおいてだった。国内のクラフトビール酒蔵が集まって、ちょうどいい規模感で開催されたフェス。秋の午後をまったりと有意義に過ごすことができた。
ただ、やはり秋のこと。日がかげるとさすがに底冷えがしてくるのですよ。
そうなるとねえ。ビールよりももっと違う酒が欲しくなってくる。具体的には、そう、日本酒。
そしてそうなると、おでんや豚汁といった日本酒にあう料理も欲しくなってくるわけだ。
そもそも日本人は、西洋東洋関係なくどんな宗教的行事も楽しければ正義とばかりに大雑把に受け入れていってしまう雑食民族である。だからお酒の祭りについてもひとつのジャンルにこだわらず好きにやってもいいのではないかと思うのだ。
酒イベントのインテグレーション
そんなふたつの疑問を解決するにはどうしたらいいのか。なんでも受け入れるような祭典は何なのか? どんな名称が相応しいのか?
答え。「収穫祭」。当然の帰結である。
秋のみのりを祝うなら収穫祭であろう。
収穫祭という冠で開催されているイベントは昔からある。オクトーバーフェストというビッグネームに引っ張られずに開催するならそれででいいじゃないか。
ただ問題がないわけではない。
ワインの新酒は初冬である。
日本酒の旬は年明けの新春である。
うん、時期が合わない。
酒を楽しむための祭なのに時期が合わないというのは致命的である。第一、それぞれの酒の新酒を楽しむ祭は、それぞれに相応しい時期に開催されてもいるのだ。
そもそも収穫の季節を端的に感じさせる名称ではオールシーズンのイベントには合わないだろうことははじめから自明だった。
なんでもありはなんにもなし、という考えかたもある。だからキーとなる主人公が建前であっても重要であり、旬であろうとなかろうと人を惹きつけるパワーワードが必要なのであった。
そしてなんとなく時期とあっていない名称だけどまあいいかあ、と思わせるためには、由来を小難しく考えなくてもいい、そこそこ最近広まった、そして(こう言っちゃなんだが)ややチャラい言葉がいい。
そう考えるとオクトーバーフェストという名称は順当なのかもしれない。
だから、たぶん、今後もクラフトビールやそれ以外の酒も含めて、お酒のイベントはオクトーバーフェストと名付けられながら開催されていくのではなかろうか。
ま、名より身をとればよし。是非に及ばす。である。
初出 24年10月18日