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【西条市長選挙2024】小中学校の再編は、児童の親世代(若者)に将来のツケを残さないため


こちらの記事も読んでいただけると幸いです。農地を買収した「中国資本」の正体について迫りました。

市長選挙が始まると、にわかに小中学校再編の問題も注目されているように感じる。
故・伊藤宏太郎元市長は「小学校は地域の拠点なので残す」という言葉を残したと今回の選挙候補者の一人が言っている。この言葉が、彼が市長職を離れた後も10年以上、いわば「足かせ」のような形で市行政に思い切った決断をする力を奪っていたのではないかと筆者は思っている。


市内小学校の児童数の現状

現状認識として、小学校の児童数のデータを掲載する。
旧西条の中心市街地域を除けば、1学年1学級の学校がほとんどという状況が見て取れる。特に西部地域(東予・丹原・小松)は児童数100人を下回る学校が多い。
近隣市が合併の早い時期から少しずつ小学校の再編をすすめていたのと比べ、西条市は児童数が自然減で0になった山間地の浦山小学校以外、再編を検討することはなかった。

西条市資料「R6年度児童生徒数」より引用

この記事では中学校の再編については触れないでおくが、現状をお知らせするためキャプチャを貼っておく。中学校も西部地域は生徒数が少なく懸念事項は多い。

西条市資料「R6年度児童生徒数」より引用


保護者・教員へのアンケートの結果

西条市は令和4年に保護者・教員を対象に、小学校の再編についてアンケートを実施している。

保護者のアンケートは、回答者の約9割が女性、回答者の年齢層は35~49歳が多いという特徴がある。
教員のアンケートは、回答者の年齢層は29歳以下が最も多いという特徴がある。次いで50~59歳が多くなっている。

学級数

保護者アンケートでは、適切だという1学年の学級数は「2~3学級」という意見が8割を占めている。市内25校のうち全学年で2学級以上は6校のみで、19校は1学級の学年が存在しうち16校は全学年が1学級である。

教員アンケートでは、適切だという1学年の学級数は「2~3学級」という意見が9割を占めているが、保護者よりも2学級が適切だという意見が多い。

【保護者】

西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査報告書(小学6年生保護者向け調査)」より引用

【教員】

西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査報告書(小学校教員向け調査)」より引用


再編に対する賛否

保護者で「学校再編を進めるべき(積極的賛成)」と、「学校再編はやむを得ない(消極的賛成)」という意見は合わせて7割にのぼる。
一方教員でも「学校再編を進めるべき(積極的賛成)」と、「学校再編はやむを得ない(消極的賛成)」という意見を合わせると、保護者同様に7割にのぼる。

愛媛新聞 2024年10月30日記事「合併20年その先へ 西条市長選を前に(中)」より引用

小学校が閉校すると過疎化が一層進む」という意見が一部の高齢者市民から出される中、市中心部から最も遠く過疎化が懸念される丹原地区の3、40代の保護者や20代の教員ら「若い世代」を中心とするアンケート回答で再編を容認する意見が4地区の中で最も多いという事実がある。

【保護者】

西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査報告書(小学6年生保護者向け調査)」より引用

【教員】

西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査報告書(小学校教員向け調査)」より引用


再編でどんな配慮が必要か

再編すると、当然ながら児童の通学の問題が出てくる。逆に言えば、この問題を適切に解決すれば学校再編への理解は進んでいくであろう。

【保護者】

西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査報告書(小学6年生保護者向け調査)」より引用

【教員】

西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査報告書(小学校教員向け調査)」より引用


校舎施設の長寿命化という問題

小学校がなくなると地域が消滅する」という不安は、とくに昭和から平成にかけて山間部・周辺地域の過疎化を見てきた高齢世代には肌感覚として強くあるのだと思う。
しかし、小学校施設は「ハコモノ」であるという事実から目を背けてはいけない。
現在、市は小学校校舎の長寿命化工事に着手しており、現在は5校が完了または事業中である。今後も数十年、安全な学習環境を児童に提供するためには必須の事業だ。

西条市学校施設長寿命化計画」より引用

もし小学校の再編を実施せず、現在の25校を維持し続けることになると、残る20校も順次長寿命化工事が必要になってくる。
予算案をみてみると、長寿命化事業には1校につき約10億円前後の総事業費が必要であると推測できる。
つまり再編を見送ると、今後長寿命化のために200億円程度の事業費が必要になってくると予想する。しかも合併特例債は令和6年度が期限のため、今後は活用ができず、通常の市債の償還には100%市民の税金が投入される。

令和4年度当初予算の概要」より引用

若い世代は小学校の再編には一定の理解を示している。
一部の高齢者は地域の衰退を危惧して反対の声を上げている。
これから長期の将来にわたって、市の施設を維持するために、市に税金を払い続けなければいけないのは誰だろうか?

財源は無限ではない。統合できるべきところは統合して、長寿命化が必要な施設を厳選することで将来の出費を抑えることも必要ではないだろうか。


若手教員の負担の問題(ブラック労働問題)

アンケートのまとめではこのような意見もある。

令和4年度 西条市の学校規模適正化に関するアンケート調査 総まとめ」より引用

市中心部から離れた小規模校では教員の配置数も少なく、とくに若年層の教員が多様な事務をこなさなければならないケースが多く、過重な負担になっていることが想像できる。
実際、他の年代と比べて若手教員の離職率は全国的に高くなっていると言われている。

1学級の小規模校をある程度統合し、中規模校にして教員配置数が改善されれば、若手教員の労働環境も向上するのではなかろうか。
少子化と同様に「教員のなり手」も少なくなっている。再編を見送り小学校が残っても、そこで働く教員が足りなくなれば正常な小学校運営は成り立たない。


参考:近隣市の小学校再編の動き

今治市では

今治市では、市街中心部の児童数減少に伴い4校が統合されている。いわゆるドーナツ化現象だ。

今治小学校(校舎を市役所別館として利用)
美須賀小学校(校舎を高齢者住宅が利用)
日吉小学校(敷地を市の駐車場として利用)
城東小学校(校舎を四国運輸局海事事務所が利用)

吹揚小学校(美須賀中学校跡地に2015年統合)

周辺地域、島嶼部でも少子化から統廃合が行われている。

下朝小学校
上朝小学校(校舎をJFAアカデミーが利用)

朝倉小学校(下朝小学校の立地に2014年統合)

有津小学校
北浦小学校
伊方小学校(校舎を幼稚園として利用)

伯方小学校(2007年に統合)

新居浜市では

離島の小学校が廃校になったほか、新居浜市でもドーナツ化現象で市街地の小学校が再編されている。

大島小学校(2008年休校、2013年廃校)

若宮小学校(校舎を公共施設「ワクリエ新居浜」として利用)

惣開小学校(2018年統合)