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【西条市長選挙2024】現職市長の間に「市の借金が2倍に膨らんだ」という批判は的外れのフェイクです

2024年11月3日の西条市長選挙公示日を迎え、選挙戦が始まっている。
相変わらず、YouTube等SNSである新人候補以外の2候補に対する真偽不明の情報による批判が続いている。

現職に対する批判は避けられないものではあるし、民主主義にとってはある方が健全とは言える。しかし、誤った嘘の情報を根拠にする批判批判ではなく誹謗中傷である。
今回はそのうちの一例を取り上げ、偽情報をファクトチェックする。


市選出県議のビラの情報は本当なのか?

西条市選出の愛媛県議会議員が最近タウン誌等で配布した県政報告資料があるが、その資料の情報を元に「西条市の財政 借金が2倍に膨らむ」と現職を批判する動画がある。

YouTubeチャンネル「完全版の家づくり コージーベース CozyBASE【注文住宅 愛媛県松山市】」 動画「西条市長選挙、ゴミ袋の議論は無意味な理由とは」(2024年11月2日)より引用

日本政府・愛媛県と並べて西条市の借金の額を示す表だが、西条市だけは(合併特例債のみ)と但し書きがある。

合併特例債とは

合併特例債とは、合併した市町村が新しいまちづくりに必要な事業に活用できる地方債(借入金)である。

合併特例債(事業費の95%まで借り入れができ、返済額の70%を国が負担する有利な財源)の発行期限が、令和6年度までとなっています。

西条市の財政 Q&A」より引用

つまり、10億円かかる公共施設の建設費用のうち、9億5,000万円(最大)まで地方債として地方公共団体金融機構や民間の市中銀行から借り入れ、返済の際には70%の6億6,500万円を国の地方交付税で賄うという制度である。
利息を考慮しなければ計算上は、市独自の負担が3億3,500万円(建設費総額の33.5%)で済むということになる。
しかし、有利な財源だからと安易にハコモノを大量に作ることで、本来の自治体がもつ返済能力を越えた借入をし、将来の返済の負担が市民に重くのしかかるのでは、という批判もある。

当初、市町村合併後10年まで活用できるという制度だったが、東日本大震災の影響を考慮し、合併後20年(震災被災地は25年)までの延長となっている。

市の借金は合併特例債だけではない

動画で示された合併特例債の数字などは、正確なのか。
一次資料として、市のホームページからPDFを検索し確認してみる。

西条市資料「市債残高の推移」より引用

こちらの資料が、合併直後から今までの市債残高の推移が一目で見て取れるので非常にわかりやすい。
これを見ると、合併特例債はあくまで複数ある市債のひとつでしかないことがすぐわかる。20年前の合併以降、合併特例債の増加にあわせてその他の市債残高が大きく減少している。
市が償還の100%を負うことになる通常の市債発行はなるべくせず、国が償還の70%を負担するという有利な合併特例債の発行比率が大きくなるのは、当然といえば当然だ。

さらに、市の資料では令和5年度の合併特例債残高は実際は302億円であり、該当の県議の県政報告資料にかかれてある402億円ときっかり100億円も数字が違うことが判明した。
これは、県議の資料の数字が単純な書き間違いではないかと筆者は思っている。

追記(2024年11月4日)

402億円の根拠について、市議会議事録 令和5年6月19日 総務分科会 06月19日-01号に於いて、県議の資料にある402.49億円に近い数字を発見した。これを根拠に資料を作られたのかも知れないが、これは答弁者が述べているように予定の額であり、後のグラフに載っているように最終予算額を本来は用いるべきだと筆者は考える。

市議会議事録 令和5年6月19日 総務分科会 06月19日-01号より引用


有利ゆえに活用しやすい合併特例債の数字だけ見せて、市債全体の増減を見せないのは不誠実ではないか

上記のグラフは特別会計・企業会計などが含まれているので、一般会計のみの市債残高を示すグラフで見てみよう。

西条市資料「令和6年度 当初予算の概要」より引用

なお、平成28年度の一般会計市債残高は臨時財政対策債205億+合併特例債190億+その他103億=合計498億円である。
県議の資料にならい平成28年度と令和5年度とを比較すると

H28 498億円 : R5 581億円 = 約1.16倍(+83億円)

である。
借金は増えてはいるものの約16%であり、合併特例債の活用期限が迫るなか必要な施設の整備・改修が急がれている状況を鑑みれば、許容できる範囲内ではなかろうか。
また市債総額で言えば、現職の1期目は残高が増加しているものの、2期目は減少に努めているといえる。
少なくとも「借金が2倍」というのは事実と異なるといえよう。

YouTubeチャンネル「完全版の家づくり コージーベース CozyBASE【注文住宅 愛媛県松山市】」 動画「西条市長選挙、ゴミ袋の議論は無意味な理由とは」(2024年11月2日)より引用

「借金が2倍に膨らむ」「玉井市長になって、急激に財政が悪化!」というものが、県議の数字の誤りかもしれないあいまいな情報を根拠にした全く的はずれな批判であるか、ご理解いただけたと思う。