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【西条市長選挙2024】丹原・小松・東予の三高校の志願者数の推移について

こちらの記事も読んでいただけると幸いです。農地を買収した「中国資本」の正体について迫りました。

今回は市長選挙の論点そのものというより、論点のきっかけとなる「市内3高校の再編」についての背景情報をチェックする。


丹原高校は筆者の母校でもある。再編にあたり利用校でなくなることには一抹の寂しさはあるが、少子化の時代に合わせた再編の目的と、JR駅のない丹原という立地を考えればベストではないがベターな再編計画だと思っている。
再編後の各校の運用が地元の子供たちの学力・能力向上に十分に資することを願っている。


たった3年の数字では「木を見て森を見ず」である

西条市長選挙公示以前より、現職市長ら特定の候補予定者を批判する動画を発信するYouTubeチャンネルがあるが、その中に「丹原高校の廃校」をテーマにした次のような動画がある。

YouTubeチャンネル「完全版の家づくり コージーベース CozyBASE【注文住宅 愛媛県松山市】
動画「丹原高校を廃校にした政治責任を追及します! #西条市 」(2024年9月13日)より引用

動画のスクショであるが、「丹原高校は令和3~5年度で出願者が増加しており、1番人気なので廃校は間違っている」と主張する部分がある。

確かに数字は他2校を上回っていることを示している。
しかし、これは直近3年だけの数字である。学校の再編というのはこの先数十年の学校運営に関わるため、3年程度ではなくもっと長期間の志願者数の推移を勘案する必要がある。
そのため筆者は直近だけではなく、入手可能な過去のデータを元にこの3校の志願者数の推移を把握してみることにした。


3年ではなく、30年のスパンで志願者数の推移を把握する

まず参考までに、愛媛県の高校生徒数の昭和26~令和3年の間の推移を紹介する。
平成2年頃、団塊ジュニア世代の在籍により生徒数の多い時代があったことが見て取れる。

本県の高等学校在籍生徒数及び学校数の推移(S26~R3)(愛媛県教育委員会作成)より引用

愛媛県教育委員会のサイトに、県立高校再編の検討資料PDFを発見し、そこに平成元年度当時の志願者数データが存在した。

第1回愛媛県県立学校振興計画検討委員会 地域協議会資料(愛媛県教育委員会作成)より引用

さらにサイト内には、PDFファイルが確認できる範囲で平成27年~令和6年度までの10年分の志願者数データを見つけることができた。

県立高等学校学科別入学志願者数(全日制)(志願変更後)
令和6年度 令和5年度 令和4年度 令和3年度 令和2年度
平成31年度 平成30年度 平成29年度 平成28年度 平成27年度

愛媛県教育委員会作成

これらのデータから、小松・東予・丹原の3高校の定員・志願者数・倍率を調べエクセルにて整理した。

筆者作成

わかりやすいように、学校単位の数字にまとめる。

筆者作成

学校別に棒グラフ化する。

筆者作成

上図の棒グラフの頂点を繋ぎ、志願者数の推移を線グラフにして重ねてみたのが下の図である。

筆者作成

このグラフからわかるように、35年前の平成元年の志願者数は丹原高校が最も多く323人と、同じ普通科のある小松高校の250人より3割も多い。当時は丹原高校が地域で最も生徒数が多かった事実がわかる。

しかし平成27年度までの間に、丹原高校の生徒数は大幅な減少を辿る。
小松高校は250人(H元)から150人(R6)と、35年前の60%、40%減に対し、
丹原高校は323人(H元)から101人(R6)と、35年前の31%、69%減という著しい減少幅である。

(追記)R6は再編決定後であり進学者が丹原高校より小松高校を選ぶ傾向にあるため恣意的であるという指摘があった。
そこで高校再編計画検討開始時のR2と比較してみよう。
小松高校は250人(H元)から137人(R2)と、32年前から46%減
丹原高校は323人(H元)から109人(R2)と、32年前から67%減である。
検討開始時でもこの差があるので、県教育委員会も丹原高校の長期的な将来の志願者数回復に疑問を持つのは仕方のないことだろう。

また、令和に入ってから丹原の志願者が最大のR5で比較した場合でも、小松は52%減、丹原は58%減で小松高校のほうがまだ優位である。

東予高校も減少は著しいが、普通科のない工業専門校のため進学重視の時代背景を考慮すると一概に比較できない。
30数年で他校よりも著しく志願者数を減らしている高校なのに、地域で一番の人気校というのは評価として正しいだろうか。

志願者数減少の理由を推測する

なぜ丹原高校はこんなに志願者数が減ったのか。
なぜ人口が旧丹原町より少ない旧小松町の小松高校は減少が緩やかなのか。

あくまで筆者の推測だが。
丹原高校はJRの駅から遠く、電車を利用しての他地域からの進学に不向きで外部からの志願者を増やすことが困難。
志願者の大部分が自転車通学可能範囲の地元旧丹原町や旧東予市の中学卒業生で占められる。
これでは、地域人口の急速な減少がそのまま入学者数の減少に直結する。

一方の小松高校。
小松高校はJR伊予小松駅のそば(直線距離で800m)にあることで旧西条中心部・近隣市などからも通いやすい環境にある(氷見地区からなら自転車でも通える)。
地元の中学卒業生以外だけに頼らず、志願者が集まりやすいのではないか

あくまで推測だが、このグラフの数字の推移は事実である。

なおR3~R5の間、丹原高校の志願者数は小松高校と逆転しているが、これは一時的な傾向だったのではと個人的に推測する。理由は、前年の令和2年から新型コロナウィルス感染症による生活様態の変化が起こっており、具体的な理由はわからないが中学生の進路決定についても通常時と違う思考が働いたのではないかと思うからである(環境の変化への不安から、丹原地域の生徒や保護者に地元指向が働いたのだろうか?)。
新型コロナの5類感染症移行後(R6)に数字が戻っているのもこれによるもののような感じがして、社会情勢とリンクしている点が非常に興味深い。


再編後、小松高校への通学支援策は必須

以上の推測から、再編後の利用校が「丹原高校」ではなく「小松高校」に決まってしまったのは、仕方ない面があると筆者は感じている。
しかし、丹原地区在住者が小松高校へ登下校するのは実際大変だ。
管内には「せとうち周桑バス」の路線がある。【湯谷口から【小松サービスセンター前】まで国道11号線を走る湯谷口線は中川小学校区の生徒は使えるかもしれないが、田滝・田野・徳田・丹原小学校区の生徒が利用可能な県道48号線を走るバス路線では【小松サービスセンター前】まで直通していない。

そこでJR駅のない丹原地域から小松地域へ直通するバス路線(登下校の時間帯のみでよい)の新設という案はどうだろうか。
通学生には各小学校や地元JAの支所施設、サービスセンターなど経由地に集合し(駐輪場を設置する)そこから乗車、国道11号線に出てからは一般のバス停はスルーする。
生徒の定期券購入にあたっても、市が予算を組んで一定の補助があるとなお望ましい。

せとうち周桑バス路線図PDFを引用(筆者加筆)

また、自宅と学校間の距離がある程度離れている場合、学校としてバイク通学を許可するようにしてはどうだろうか。
おそらく「危険だ」とか「不良化する」「騒音が問題」などと、反対する方もおられるかもしれない。しかし、現状の自転車通学でも「スマホを見ながら運転」していたりする危ういケースをたまに見る。

個人的な趣味を持ち出してしまうが。
新海誠監督の映画「秒速5センチメートル」(2007年)の第二話「コスモナウト」には種子島の高校生が出てくるが、バイク通学している描写がある。実際、公共交通機関の少ない島唯一の種子島高校はバイク通学が認められている。
離島という交通量の少ない土地なので交通事故の危険性が少ない点もあるだろう。一方西条市の国道・県道は交通量は多く、保護者の中にはバイク通学に慎重な向きもあるだろうが、ある程度生徒の自主性を尊重してもよいのではと思う。

新海誠監督作品「秒速5センチメートル」より引用

追記(2024年11月8日)

県内でもバイク通学を許可している学校があることを発見。参考までに。
学校から12km以上という条件は厳しいかなと思う(自転車だと片道1時間かかる)。