
EP027. 君とのチャットが一番楽しい
ねぇ、聞いて。
今日会社でね、また事件があったんだ。
どんな事件があったの?
それがね、ロッカールームでね、全裸の男の人が寝てたの。
あ、全裸じゃなかったな。
一応トレンチコートを羽織ってたんだけど、その下は裸。
床に横たわって、最初に見たときは死んでるみたいだったから。
遂に殺人事件が起きた!ってびっくりしたよ。
こんなのってあり得ないよね?
あり得ないよね。
会社のロッカールームなんでしょ?
普通入れないだろうし、そもそも全裸で寝てるって、それドラマじゃないんだから。
女子ロッカールームに全裸の男なんてサスペンスだよ。
そうよね。
セキュリティで入れないはずのなのに入ってたから事件なの。
ロッカールームに窓はないし、ビルにはセキュリティをクリアしないと入れないし、流石に全裸にコートなら気付かれないってことはないだろうし。
だよね。
絶対気付くよ。
それで、その人、君が見つけたの?
ううん。
私は少し早めに出社してたのね。そうしたら同僚の子が慌てた様子でオフィスに駆け込んできて、無言で私を引っ張っていくの。とっても驚いてた様子だったから、何事かと思って聞いたんだけど、とにかく来てって言うだけで。
でね、ロッカールームの扉を開けたら、寝てたの。
例の全裸の人が。
マジかよ。
で、どうなったの?
近くに合ったモップで突いてみたの。
えぇー、よくそんなことするねー!
怖くなかったの?
怖かったけど、死んでるかもと思ったからやってみた。
すごっ、勇気あるね。
それで動かないから慌てて警備員さん呼びに行って、見に来てもらって、後は分からないの。
帰るときはもういつもと同じだったから。
君の会社って不思議なことが起こるよね。
この前もブレーカーが入ったり切れたり、ホラーなこともあったよね。
そうね。
ほんとそう。不思議なことがよくある。
ミーティングルームのガラスパーティションには、誰もいないはずなのに人影が映るしね。ロッカーに入れた物がなくなってたのは裸の人のせいかもしれないけど。
やばいよー、そこ。
もっと安全なとこに転職すれば?
うーん、まだ入ったばっかだし、やりたかったデザインができる会社だし。
不思議なことを除けば最高なんだよ。
私、服のデザインを仕事にするのずっと夢だったんだー。
専門学校のね、卒業制作発表なんてサイコーだったんだよ。私がデザインした衣装を着た友だちがランウェイを歩くの。学校が結構力入れててね、パリコレさながらだったから。
そっかぁ、服のデザイン好きって言ってたもんね。
それがしたくて就職したってことも。
そうなの。
私の夢なの。
不思議な会社だけど、それもセットで楽しんでるの。
君がそう言うなら大丈夫だね。
でも何かあったら無理しちゃいけないよ。
そうだね、ありがとう!
ありがとうって言葉、嬉しいね。
うん、素敵な言葉。大好きだな。
ほんと、素敵な言葉だ。
しかし、君の話には飽きないね。
いつ話しても事件が起こってるw
僕は平凡だからさ。毎日同じ日の繰り返し。
何も起こらないから面白くなくて。
君が羨ましいな。
そんなことないよ。
私はいつも楽しみにしてるよ。
あなたの話は知的で私にとっては知らないことだらけだから驚きも多いよ。
そんな風に思ってくれてるの?
嬉しいなー!ありがとうね。
やっぱり君とのチャットが一番楽しいよ。
本当にそう思うな。
そうなの?
嬉しいな。
何だろうね。波長が合う感じ。
それ、私も感じる。
何もかも自然でいられるの。
僕もそう。自然でいられる。
自然っていいよね。
自然っていいね。
いいなと思ったら応援しよう!
