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甘い静かな時間 23

彼との食事はとっても楽しかった。
試験の時の緊張感とか、勉強してなかったことが問題に出てあせったとか

「自分でブレンドして、オリジナルを作るブレンドティを実践する試験もあるんだ」

「そんなことまで!
大変だったのね」

私は話を聞いているだけで、自分では絶対無理だと思った。

そうしていると食事も終わって、デザートになった。

「デザートお持ちしましょうか」
と、としふみさんが入ってきた。

そして、

「きら、準備できてるぞ」
「ありがとう」
と2人で話しているのを見て、私が不思議そうな顔をしていると

「あやさん、」
と急に立ち上がり、いつもお店で見るきらくんの顔になっていた。

わたしはドキッとして
「はい!」
と言って姿勢を正した。

「ただいまフレーバーティーをお持ちしますのでしばらくお待ちください」
と言って、会釈して部屋を出た。

わたしは、すごく構えてしまって
「あ、ありがとうございます」
と言ってしまった。

そんな慌てている私を見て、としふみさんが

「あいつ、あやさんに試験で合格したフレーバーティーを飲ませたいらしいんですよ
それで、この間予約してきた時むっちゃお願いされて笑」

と頭を掻きながら話してくれた。

そうだったんだ
だからあの合格発表の日、私への電話が遅くなったのか

と思うと、あの時つい感情だけで話してしまった自分が、情けなくなった。

「あの、あやさん」
と急に真剣にとしふみさんが言ってきた。

「きらのこと、ありがとうございます
あいつがあんなにまじめな顔みせることないんで」
というとしふみさんに

「え?いつもお店ではクールでまじめよ?」
というと
「それは、ポーカーフェイス気取ってるだけですよ」
と笑いながら言った。

あれは気取ってるのかと思うと私はおかしくなって、
「そうなの?」
と、噴き出してしまった。

きらくんってほんとに良いお友だちもってるな
と、つくづく思った。

しばらくすると、きらくんが戻ってきた。

「お待たせいたしました」

仕事モードのきらくんだ
やっぱり仕事モードのきらくんは、最高にかっこいいな
と思うと一気に顔がほころんでしまった。

それをみていたとしふみさんが
「あやさんも、こいつのことそんなに好きだったんですか」
と、言われて
「え?いや、別に、」。
と、思わず慌ててしまった。

それをみていたきらくんが
「お前、あやさんをからかうのは100年早いんだよ
てか、早くデザートもって来いよ」

というと、やれやれという顔で
「はいはい、承知いたしました」
と部屋を出ていった。

そして彼は私の前にティーカップを置いて、ポットで紅茶を注いでくれた。

一瞬にしていい香りがしてくる

こうしてきらくんみずからいれてくれるのは、あのパーティーの打ち合わせの時以来だ。
私はその時のことを思い出していた。

あの時、ドキドキしたよな
今もか
と思うとふとニヤついてしまった。

でもその瞬間気づいた
あれ?この香り

と思い、もう一度香りを嗅ぎながら一口飲んだ。

やっぱりこれ、少し違うけどあの時の味と香りに似ている

その反応に彼が
「あやさん、気づいた?」
とほほ笑んだ。

私は彼の顔を見て
「気づいた!
これ、あの時の紅茶
きらくんが私のためにってブレンドしてくれた紅茶よね」

「そうだよ
あの時の紅茶をさらにブレンドしなおしたんだ」

「おれ、あの時ほんとにあやさんと仲良くなりたくてその思いだけで作ってた
そして、今度はもっとあやさんが好きになって、その気持ちを込めてブレンドしたんだ」

「そうだったの」
わたしは、それ以上の言葉が出てこなかった
だってきらくんの思いが嬉しすぎて、一言でも言ったら涙がこぼれそうだったから

気持ちをかみしめながら飲んでいたら

「これね、ちゃんと名前あるんだよ」

「そうなの?」

「うん、これね 
SWEET OF AYA
っていうんだ」

そういわれた瞬間、もう無理だった
一気に涙が溢れて、止まらなくなった

「あやさん!大丈夫?」
と、泣く私に慌てていた。

「ごめんなさい
あの時のブレンドティの話しから涙が出そうだったの我慢してたんだけど、
きらくん、ほんとにこんなに私のこと思ってくれてありがとう」

といいながら、また涙が溢れてきた。

「あやさん・・」
と言って、指で涙を拭いてくれた。

その瞬間にとしふみさんが入ってきた。

「おま・た・せし・ま・し・・
まずかったかな」

と、恐る恐る入ってきた。

「やっぱりお前って空気読めねえやつ」
と言って、きらくんは笑っていた。

「悪かったな」
と、またじゃれ合う2人に心が安らいだ。

「はい、あやさん、当店自慢のレアチーズケーキのデザートプレートでございます」

レアチーズケーキ!
わたしが一番好きなやつ

と思っていると
「きらからあやさんが一番好きだからとお聞きして、作らせていただきました
きっと、このきらが入れた紅茶にぴったりですよ」

と、私の前に置いてくれた。

わたしは心づかいをしてくれたとしふみさんに
「ありがとうございます」
と丁寧にお礼をいった。

するととしふみさんが
私を覗き込むようにして
「いえいえ、あやさんにぴったりです」
と言ってきた。

その途端にきらくんが
「おい!としふみ!近い!」
と怒っていた。

そんなきらくんをみて、
「ばーか」
と言って笑っていた。

そしてとしふみさんは、扉の方へ行き
「では失礼いたします、ごゆっくり」
といって、頭を下げて出ていこうとしたとき

もう一度振り向いて
「あ、あやさん、言い忘れてました」

「え?なに?」
というと

「きらのやつ、無茶苦茶面食いなんですよ
あやさんはその通りの人ですね
きらが一目ぼれしたっていうの、わかりましたよ」
と。
私は恥ずかしくなって顔が一気に赤くなった。

きらくんは
「あいつ、何言ってんだ」
といいながら、なんとなく嬉しそうだ。

私はそのきらくんをみて、幸せを感じていた。

「あやさん、食べよ」

きらくんが入れてくれたブレンドティー
きらくんの愛情がいっぱい入っている気がした。

to be continued・・・


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