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甘い時間 27

さとみは、あやの会社と関連する仕事をしている。
あやの夫である朝倉が経営する会社に登録しているクリエイターは、さとみが働く会社からも、推薦しているのだ。

さとみは、昨日あやに会って、元気な顔が見れてよかったと安心していた。

「今日はお忙しいところありがとうございました。
では、わたくしの方からも朝倉社長の方に伝えておきます」

さとみはクライアントと商談を終え、ホッとしたところだった。

「朝倉さん所に案内するクリエイターは気を遣うわ
とりあえず、落ち着きたい~」

と、さとみはあたりを見渡しながらカフェを探した。

「あ、あそこ!」
以前早坂きらが、あやの相談がしたいと話した場所だった。

「あそこならお手軽そうね」

さとみは、さっきの商談をまとめたいというところもあり、作業が出来てお手軽な店がいいと思っていた。

店内に入ると、かなり空いていた。
さとみは、先にコーヒーを買い、一番奥の二人掛けの長椅子に座った。

ノートパソコンを出して、コーヒーを飲みながら仕事に集中していた。
と、その時
「田中さん?」
さとみを呼ぶ声がした。

ふと見ると、そばにコーヒーを持ったきらがたっていた。

「早坂くん!
あれ?仕事終わりなの?」
というと、立ったまま
「はい、さっき終わって、ちょっと一息つきたくて」
と、ちょっとダルそうな感じで言った。

なんか疲れてるなー
そんなに忙しかったのかな
彼らしくないな

とさとみは思いながら
「そっか、お疲れ様!
まあ、ゆっくりしたら?」

と言って、仕事を始めようとしたが、きらは動かない。

え?なに?どうした?
と、さとみは戸惑った。

「田中さん、仕事中?」
さとみがパソコンを開いていたから聞いたようだ。

「まあね、さっきクリエイターの人と会って、商談が終わったとこなの
それで、朝倉社長に送るメールを作成中ってとこかな」
というと
きらの目が一瞬大きくなって、少し体がピクッと反応していた。
そして
「朝倉さん・・・」
とつぶやいた。

さとみはまずかったかな
と思った。

「朝倉社長とは仕事の関係があってね」
と、焦りながら言った。

なんで私があせるんだ

とさとみが思っていたら

きらは大きなため息をついて
「朝倉さん・・・あやさん・・・」
とつぶやいた。

え?大丈夫か?
とさとみは思い
「早坂くん?大丈夫?何かあったの?」
と聞くと

「田中さん、ここ座っていいですか?」
と言ってきた。

いやいいけど、この椅子長椅子だから、えーー早坂くんと並んで座るの?いやいやそれちょっと緊張するんですけど

と思いつつ
「いいけど・・・横並びよ?」
と、一応伝えてみた。

「あーーおれ気にしないんで、お構いなく」
いやいや、あなたが気にしなくても、私が気にするんだって
と思いながら
「じゃあ、どうぞ」
と、さとみは横に置いてあるかばんを自分の方に寄せた。

そしてきらは座るなり、
「あの、仕事かかりますか?話聞いてほしいんですけど」
と、かなりうつろな様子で言ってきた。

「まあ、今しないといけないわけじゃないけど、ちょっとだけ区切りつけさせて」
というと
「分かりました、待ってます」
と言って、前を向いてコーヒーを飲んでいた。

凄く深刻そうな顔しているけど大丈夫か?
相談ならあやちゃんにすればいいのに
とさとみは思ったが、すぐに

そっか、これはあやちゃんのことか?
と理解できた。

さとみは早く区切りをつけようと、パソコンに集中した、いや集中しようとした。
でないと横にいるきらからの変な体温に惑わされそうだった。

時折さとみはきらをチラ見した。

確かに綺麗な横顔してるな
この間は正面だったし、今日は横にいるから近いし、あやちゃんがぼーっとなるのわかるわ
彼の変な色気に惑わされそう、早く終わらせて、とっとと帰ろう

と、さとみは思った。

さとみは、きらから感じる惑わされそうな体温を押しのけながら、仕事に集中した。

「早坂くん、お待たせ終わったわよ」
というと、きらはその声に反応して、さとみのほうを見て
「すみません」
と、にっこり微笑んだ。
でもその微笑みは、いつもの自信たっぷりなきらではなく、不安そうでうつろ気な微笑みだった。

それでも、そのにっこり笑うきらの口元に、少し見える八重歯にさとみはドキッとした。

なに?どっきとするじゃない
この不安そうな顔が、余計に早坂くんの色気を増しているのね
腹立つくらい八重歯可愛いし、あやちゃんが付き合ってなかったら、危ないところだわ

と、思いながらふっと、さとみは小さく笑った。

私もまだまだだなと、思いながら

「で、話って何?」
と、きらをしっかり見ながら言った。

to be continued・・・

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