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甘い静かな時間 26

きらくんと甘い時間を過ごして、あっという間に1週間が経った。

なんだかまだ嘘みたい

と、ふと何かの拍子に私はあの日を思い出す。
思い出すと、ついつい顔が緩む。

いかんいかん、こんな顔今はいいけど、夫の前では絶対だめね

と、我に返り仕事をする。

あれから私は、夫の仕事が急に忙しくなり、その上夫は2週間ほど海外に出張に行っている。

その間、私は夫から送られてくる情報を常にキャッチしてまとめていっている。
毎日忙しすぎる。
でも、あの日の幸せな時間を思い出すと、忙しい仕事も全く苦にならない。

「あやちゃん、こんにちは」
「あ、さとみさん、こんにちは」

さとみさんは、別の会社だが夫と関係がある仕事をしている。
だから時々、私たちの会社にもやってくるのだ。
私はそんなわけで、さとみさんと仲良くなったのだ。

「あれ?今日来る日でした?」
と、私は何かスケジュールの見落としがあったのかと、予定表を急いで確認した。

「大丈夫よ
あやちゃんに会いに来ただけよ」
「あやちゃん忙しそうで、私のことほったらかしだから」
と言いながら、笑っていた。

「もう、さとみさん
夫からのメールがランダムで中々時間作れなくて」
「分かってるって、新しい事業でイギリスだっけ?行ってるのよね」
と、手土産にケーキを持って来てくれたさとみさんが、お皿を出してとりわけながら言った。

「すみません、そんなことさせちゃって
そうなの、ほんとに色々思いついて行動する人だと感心するわ」
「いいのよ、あやちゃん忙しそうだから、私がお茶入れてあげる」
「キッチン借りるわよ」
と言って、用意し始めた。

「朝倉さん、ほんと根っからのビジネスマンね」
「そうね、そのために生まれてきたって人じゃないかしら」
と、私はさとみさんがお茶を入れてくれるまでに、仕事をいったん終わらせるために、倍速でこなしていた。

「あやちゃん、休憩できそう?
用意できたわよ」
と言われて、
「はい、区切りつけれたので、そっち行きまーす」
といって、一度パソコンを閉じた。

さとみさんが買ってきてくれたのは、私が大好きなレアチーズケーキだった。
「うわ~レアチーズケーキ!美味しそう」
という私に
「ま、calmeのケーキには劣るけどね
それに、早坂くんの紅茶にはかなわないけど、どうぞ」
といって、紅茶を注いでくれた。

「もう、さとみさん、またそうやってからかう」
という私は、きらくんを思い出し、顔が赤くなるのが分かった。

「なに思い出してるの?
あやちゃん、顔赤いわよ」
と、にやにやしながら、詰め寄ってくる。

「別に何もないです、いただきまーす」
と、私は話をそらした。

食べている私の顔を見て、
「あやちゃん、幸せそう」
と、さとみさんが微笑みながら言ってきた。
わたしは
「うん、幸せ」
というと
「ほんとはね、あのホテルに行った日、心配だったのよ
越えてしまうのが不安だったって言ってたから」
「でも、逆にその方がよかったみたいね」
と、さとみさんは、安心した顔で言った。

私は、あのホテルできらくんと過ごした日、さとみさんに
もう大丈夫とだけ、連絡を入れた。
かしこいさとみさんは、それだけですべてを理解してくれたのだ。

「そうね、あのきらくんとの時間は、私にとって最高の日だったから」
と、思い出しながら話した。

そんな私をさとみさんが写真を撮った。
「え?なにしてるの?」
とびっくりした私は、さとみさんに我に返り言った。

「いや、とっても幸せそうで可愛いからつい撮ってしまった笑」
と、さとみさんは、私の写真を見ながら話した。
「うんうん、可愛いわ、早坂くんにも見せたいくらい」
と言って、思い出したように
「そういえばあやちゃん、あれから早坂くんとは?」
と、さとみさんがいった。

「うん、連絡とってない」
というと、驚いた顔で
「え、連絡入れてないの?もう1週間経ってるのに?」
「そういえば、もう1週間経ってるんだ
忙しくて、連絡とっても会える時間作れそうにないから、入れてない」
という私の顔をじっと見てきた。

「なに?」
というと、
「愛の力は凄いね、
あんなに不安で泣いていたあやちゃんが、こんなにも落ち着いていると思って」
というさとみさんに
「そうね、私もびっくりしてる
きらくんに抱かれた日、純粋に幸せだなって思ったの
そして、この幸せを壊したくないって
だから妙に落ち着けるのかもしれない」

「あやちゃん、ほんとに良い顔してるよ」
と、さとみさんのいつもの温かい目で言ってくれた。

「でも、こんなこと私が言うのもダメなんだけど、今朝倉さんいないじゃない?
絶好のチャンスなんじゃないの?」
というさとみに
「あーーそっか、考えてもみなかった笑」
という私に、あきれた顔で
「ほんと、あやちゃんって・・・
ま、そこがいいところなんだけどね」
と、笑いが止まらないという顔で言ってきた。

「もう、さとみさん、笑いすぎ」
「でも・・」
という私に
「どうしたの?」
「うん、そんなこと話してたらきらくんに会いたくなってきた」
と、言う顔がかなりほころんでいた。

「あやちゃん、そんな顔は、早坂くんの前だけにしなさい」
と、笑いながら言ってきた。
そして
「朝倉さん、帰ってくるまでまだ1週間あるんでしょ?
それまでに少しは時間作れそう?」
と、私の顔を覗いてきた。

「そうね、少しぐらいなら作れそう」
というと
「それなら、めどが付いたら連絡してみれば?」
と、優しく言ってくれた。
「そうする」
と、さとみさんが入れてくれ紅茶を飲みながら答えた。

さとみさんの入れてくれる紅茶は、きらくんと違う愛情がこもった味がする

と、私は顔がまたほころんだ。

そして、きらくんに無性に会いたいという衝動にかられた

to be continued・・・

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