甘い静かな時間 22
ホテルの外で話していると、彼の友だち、としふみさんが出てきた。
「2人ともホテルの前でいちゃつかないでくれますか?」
「なんだよ、いちゃついてなんてないし」
「あやさん、お久しぶりです」
と、私にもにっこり挨拶してきた。
「こんにちは、としふみさん」
と笑顔で返しているのを見て、きらくんがすねたような顔で
「山中でいいよ
お前もあやさんって呼ぶな!」
この感じほんと心地いい
2人の会話に和む
と、この空気の余韻に浸っていると
「いらっしゃいませ
ようこそ当ホテルへ」
と、としふみさんがどうぞという手招きをして、部屋まで案内してくれた。
彼が予約してくれたスイートの部屋は、最上階にあって、海が一望できた。
「うわーすてきー
海が綺麗」
と感動していると
「そうなんですよ
この部屋は当ホテルのイチオシなんで」
と、自慢そうに説明しているとしふみさんを遮断するかのように
「俺ずっとこの部屋であやさんと過ごすの憧れてたんだ
だから合格したら絶対ここでって」
「きらくん。。ありがとう」
と二人で話していると
うっうっん
と咳払いが聞こえてきて
「そういうのは僕がいなくなってからにしてくれますか」
と、としふみさんがニヤニヤしながら言ってきた。
「あっ、すみません
なんか、大人気なくて」
と慌てる私に
「謝らなくていいよ
お前も空気読めよな」
ときらくんが、あっちいけっと言う感じで手でとしふみんさんをはらうように言った。
「はいはい
失礼しました
では、お料理をお持ちしますね」
と笑いながらとしふみさんは部屋をでた。
その瞬間、きらくんが抱きしめてきた。
「あやさん、会いたかった」
いきなりでびっくりしたけど、きらくんの腕の中、心地いい
そんなきらくんの温かさを感じながら、
「私もよ、すごく会いたかったわ」。
と言って、抱きついた。
しばらく抱き合って、お互いどちらからともなくキスをした。
それはとっても優しくて、でも深くてお互いが求め合うキス。
胸がドキドキする
しばらくキスをして、
「そろそろとしふみが料理持ってきそうだね」
「そうね」
と、2人とも笑いが出た。
そして、座ったところに、ちょうど
「お待たせしましたー」
と、としふみさんが、料理を運んできた。
「今日はきらの合格祝いということで、スペシャルコースでございます
そして、これは僕からの合格祝いです」
と説明した。
「おい、ほんとか?」
ときらくんが驚いていた。
「ほんとだ」
と言って、としふみさんが、私たちに会釈した。
「だってお前かなり頑張ってたしな
てか、あんなきらみたの初めてだよ」
そうなんだ
元々頑張り屋さんだと思ってた
と私は胸の中で思った。
「こいつね」
と、としふみさんが言いかけると
「おいやめろってば
おまえ、おしゃべりなんだよ」
と、きらくんが口をふさごうとした。
私は凄く聞きたい衝動にかられて
「としふみさん、聞かせて」
と言った。
その言葉に、彼もあきらめたようだ。
「いやこいつ、前からこの試験は受けるって言ってたのに、全然勉強してなかったんですよ」
その言葉にびっくりした私は
「そうなの?
でも、私といる時すごく真剣に勉強してたわよ」
というと、
「それはこいつがあやさんと出会ったからですよ」
え?
と思わず私はびっくりしてきらくんの顔を見た。
すると慌てたように
「ほんとにおしゃべり!」
といって、すねてた。
その顔可愛すぎだ
と思った。
としふみさんはさらに続けて
「おれ、まだあやさんのこと知らなかったから
なんで急に勉強する気になったんだって聞いたら、大事に思う人ができたからって」
その言葉に私は胸が張り裂けそうだった
思わず、
「きらくん・・」
と言って、見つめてしまった。
「まあ、そういうわけで俺も応援してたってわけなんで」
と、ほかにも言いたいことがあったようだが、私たちを見て話を切り上げたみたいだった。
「では、料理が冷めるんで」
と言った後
「コース料理だから俺まだ来るからな」
と、にやっとしながら、きらくんに耳打ちした。
「うるせいよ!」
と言って、きらくんが柄にもなく顔が赤くなっていた。
それを見た私も、2人でいることになんだか恥ずかしくなってしまった。
としふみさんが部屋から出ると、ちょっと気まずい空気になった。
「あいつほんとにおしゃべりだから」
と、空気を遮断するようにきらくんが切り出した。
「でも楽しかったし、私の知らないきらくんが少し見えて嬉しい」
というと、
「知られたくなかったよ
カッコ悪い~」
とすねながら、食べ始めた。
その姿がとっても愛おしくて、ついついがんみしてしまった。
「あやさん?食べないの?」
といわれ、我に返った。
「あ、そうね、食べるわ」
とあせっていうと
「あやさん、そんなに俺のこと好きなの?」
といつもの調子で言ってきた。
いつもなら、あたふたする私だったけど、この日は自分でもびっくりするくらい積極的というか、なんだろ、いつもと違う熱い気持ち
と思いながら
「そうね、かなり好きみたい」
と言って、食べ始めた。
すると、急にせき込む声がした。
「ごほごほ、あや・・さん」
びっくりした私は
「どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫だよ
ただ、今日はいつものあやさんじゃないからびっくりしただけ」
という彼に、
初めてだな、こんなあせるきらくん
と嬉しくなった。
でも彼はすぐに私を超えてくる。
にやっと笑って、じっと私を見つめてきた。
「な、なに?」
というと、
「ご飯の後が、楽しみだね
今日はいつものあやさんとちがうし・・・」
と言ってきた。
その瞬間一気に顔が赤くなるのが分かった。
そんな私を見て彼は
「おれはあやさんが大好きだよ」
とだけ言ってきた。
もう、頭が真っ白だ。
好きだということはいつもいわれてる。
でも、今日はあらためていわれると、心臓が飛び出そうなくらい鼓動が速くなった。
やっぱり彼には勝てないなと。
to be continued・・・
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