資格 組合員の範囲 その1 仕事と住所
鹿島 「さあ、今日は資格の話をします。」
出雲 「資格って、はいるやめるの事って聞いたんですけど・・・」
鹿島 「そう、はいるやめるもそうだし、はいれるやめられる、はいる日やめる日、基礎の基礎です。組合員はその基本です。組合員が国保組合という法人を設立して国保組合が誕生します。」
鹿島 「いざ国保組合を作ろうとした時に重要となるのは、組合員となる人に共通する二つの要素ね。ひとつは同種の事業または業務で、もうひとつは同一地区内住所。簡単に言えば仕事と住所です。住所については皆保険制度になる前から全国規模の国保組合もあったから例外もあるのだけれど、原則はそうなってない。今の日本は皆保険制度っていって、誰でもどっかの公的健康保険に入っているか、入っていない生活保護の場合でも医療サービスを受けられる。医療保険は会社の健康保険や公務員の共済組合という職域の被用者保険と、自治体の国民健康保険や国保組合のような地域の社会保険に分かれる。分かれるといいましたが、自治体がおこなう国民健康保険が住所を通して網をかける形で皆保険制度が完成したことから国民健康保険の基本は自治体となります。それまでは国保組合は国保事業の中心だったのですが、皆保険制度発足から国保事業の中心は自治体に移りました。国保組合は自治体の国保事業を邪魔しちゃいけないよってことになったんです。」
出雲 「どうして国保組合を無くさなかったのですか?」
鹿島 「もともと在ったものだし実績も大きかったわね。また、同じ仕事をしている者に共通する健康に関連する課題の解決を期待されての事でしょう。職業病とか、働けなくなった場合の生活保障とか、同じ仕事をしていれば共通する課題は多いわね。それに、現在もだけれど、被用者保険の事業主負担に全部の事業主が耐えられるかということも大きい。何にしろ、国保組合の事業が自治体国保と全く同じでは存在意義が問われます。」
鹿島 「続けるわね。地区はいいとして、同種の事業または業務の話です。これは簡単なようで結構複雑です。国保組合によっていろいろ意見もあるようですが、社会保険として国庫補助金を入れてもらう以上はお役所が「これは同種の事業または業務だよ」と認めていれば安心でしょう。そこでお役所が関係している 「日本標準産業分類」や「日本標準職業分類」のような刊行物やさまざまな法令にある事業の分類のなかに当該事業として書いてあれば間違いないわね。」
出雲 「何かあっても、ここにこう書いてありますって訳ですね。懐に飛び込むんですね。」
鹿島 「それが賢明でしょう。それと、事業にしろ、業務にしろ、業という字が使われていますね。この場合の業は繰り返し、言い換えると、継続性が必要です。ひょんなことからたまたま仕事になって儲かったからとしても事業とは言いません。ん?腑に落ちない?」
出雲 「いえ、繰り返しているふたつの事業、そう、兼業でしたっけ?これはどう考えるのかなって思って・・・。」
鹿島 「兼業については主たる仕事でという事になっています。それぞれの国保組合がうちはこうだと文書で残しておくことが大事です。法令にそぐわないことをやると最悪解散命令を出される危険性もあるから、常識を踏まえてお役所と相談すればいいわね。」
出雲 「じゃあ、パートやアルバイトは?」
鹿島 「短時間労働者か・・・出雲さん、回転速いわね。」
出雲 「回転は速いらしいんですけど答えを出す前に次に行っちゃうものだから、クエスチョンマークだらけなんすよ、頭のなか。?がポポポポポって。でも、やがては何のクエスチョンだったかも忘れちゃうし・・・。鹿島さんみたいな人がいてくれると本当に便利です。」
鹿島 「便利・・・恐れ入ったわね。いい機会だから話しておきますが、私の話が全て正しいなどとは思わないでね。自分で法令なりを確認することがとても大事。もうひとつは時間がたてば法令も変わる。調べ物をする時には出所だけでなくのかも何時のものなのかも確認すること。私自身、前に加除式の質疑応答の本を読んでいて、どうも腑に落ちないから出版社に聞いてみたら、除すべき質疑応答がそうなっていないと言われたことがある。それは住民基本台帳法絡みの質疑応答だったわ。先に国保法ができて6年後に住民基本台帳法ができたのですが、住民基本台帳法施行前の質疑応答が加除式であるがゆえに最新の面を装って残っていたため、結構な弊害を生んでいた。住民基本台帳法は国保法とは所轄官庁も違っていて調整も必要だったみたいだし。いまはネットを通じてたくさんの情報を得られる。その場合も「どこの、何時の」を確認しないと後悔することになるかもしれません。」
鹿島 「さて、短時間労働者の話に戻すわね。結論から言えば、さっき話した職域の被用者保険を参考にすればいいわ。被用者保険に入らなければならない人は法令で決められるし、その基準は変化もする。これとて同種の事業または業務と同じでお役所の基準を参考にしていれば、そう文句を言われることはないわね。まだ話が残っていますが、そろそろ終業時刻だから次回にしましょう。」
出雲 「えっ、終わりですか、もう少しお聞きしたいのですが。」
鹿島 「駄目です。今日は保育園に預けている娘を迎えに行く当番日なの。どうしようもないときは残業もするけれど、残業なんてしないに越したことはないわ。他人のことは知りませんが、私は、自分と家族の時間を大切にして、いろんな知識をつけて、豊かな人生を送るつもりなの。そのために定時出勤定時退所を心掛けているのよ。定時出勤定時退所の大敵は何といっても「誤り」だから法令はそれなりに勉強してきたし、仕事がはかどるパソコンの知識も身につけた。そんなことなので悪しからず。もうひとつ。今日話したなかに「皆保険制度」とか「日本標準産業分類」とか「短時間労働者」などの言葉が出てきたわね。手が空いた時でも、帰宅後でも任せるけれど、どんなものなのか自習することが大事です。その日か次の日にやらない人はまずいつまでたってもやらないわ。出雲さんは、もちろん、やるわよね !? 」
出雲 「えっ・・・・やります・・・です、はい。」
鹿島 「そう言ってくれると思った、オホホホホ・・・」
出雲 「・・・・・・・・・」