「専門化」とビジネス
医療現場でのコミュニケーションに興味を持ちはじめた時に出会った、
バイオサイコソーシャル(BPS)モデル。
人は生物的な存在であると同時に、心理的な存在でもあり、社会的な存在でもある。そしてそれらは独立している訳ではなく、相互に影響を与えながら動的に併存している。
WHOによる健康の定義から生まれたこの概念が近年注目されてきたのは、バイオ(B)、サイコ(P)、ソーシャル(S)のどれか一つに特化した機関やビジネスばかりが増えてしまい、医療の「専門化」を促進させてしまったから。
全人的医療や社会的処方、地域包括ケアシステムなど、B・P・Sを繋ぎ合わせる考え方や取り組みも出てきてはいる。
でもビジネススクールで医療業界にいる人たちを見ていると、やはりどれか一つに偏った視点が多いなぁと感じる。
学校教育とか保育関連の事業にも同じ傾向が起きてないかな、と思うときがある。
子どもの教育関係で事業を立ち上げたり社会活動しようとしているのは、今まさに就学中の子どもがいたり、これから学校に通い出す子どもがいる人たちばかりに見える。
そうすると、その世界がそういう当事者だけで完結できる世界になってしまうのではないか、と思ってしまう。
そしてそれが長期間固定化されてしまうと、もう当事者以外の人たちが入れない(入ろうとも思わない)ような世界になってしまうんじゃないか。
しかも教育事業の場合は、子どもや家庭を持っていない(持てなかった)人たちを誘いにくい世界でもあるだろう。
子供がいない、持てない、出来ない人たちに対して、子供たちの教育のために私たちと一緒に考えてください、とは言い辛い気がする。
医療のように誰しもが関わる世界とは、また違った難しさがありそうだ。