地元にいてもつまらない
日曜は生まれて初めて沢歩きというものをした。
と言っても長靴を履いて2〜3メートルの川を渡るくらいのものだったのだけど、
久しぶりに藪漕ぎもしてとても楽しかった。
楽しくて楽しくてわたしはずっと笑っていたと思う。
帰ってから早速筋肉痛で足がジンジンしていたけど、寝る前も「楽しかったな、今日が終わるの惜しいな」と思うくらい良い休日だった。
あの場にいたおじさん達も、
少年に戻ったみたいにみんな生き生きしていて、
女性達が川辺に上がるのを手を引いて手伝ってくれたり、
こっちのほうが歩きやすいよとか、
帰ったらマダニ付いてないか耳の裏とか見たほうがいいよとか教えてくれたりしてすごく頼もしかった。
泥まみれになって名前も知らない人達と笑い合う、
とても平和な世界。
いつもこうならいいのに。
久しぶりに10時間くらい寝たので、
朝起きたら筋肉痛はほとんど無くなった。
家で本業をする。眠い。つまらない。
昨日はあんなに楽しかったのに。
録画していたドラマを見て、
ご飯を食べて化粧をして運送会社に向かった。
今日はいつもの女の子が来る。
今週は彼女と同じスケジュールなので、
わたしは知らない男性タイミーに会わなくて済むからすごくホッとしている。
電車の中で爆睡していたけれど、
好きな人の工場のほうが見えるところで目が覚めた。
もう日が暮れて暗くて全然見えない。
わたしは次いつあそこにいけるんだろう。
気が遠くなる。
やっぱりわたしは地元にいると、
働いてばかりで本当につまらない。
駅ですれ違う人が昨日一緒に沢歩きをしていた人達に見えそうになったけれど、
地元では昨日みたいに知らない人と話したり笑い合ったりなんて絶対にしない。
運送会社でラップ巻きをしながら、
「好きな人に会いたいなぁ」と考えていた。
昨日沢歩きをしていたときは、
目の前の川を転ばずに渡るのに必死で、
他のことを考える余裕は無かったのに。
どうして地元にいると彼のことばかり考えてしまうんだろう。
自分で自分が嫌になる。
気づけばこの1年4ヶ月、
わたしはどこで働いていても、
いつも同じことを考えている。
家でパソコンの入力をしていても、
運送会社でラップ巻きをしていても、
食品工場でラインにパンを乗せていても、
スーパーで品出しをしていても、
わたしはいつも好きな人に会いたいなぁと考えていて、
もしこれで好きな人と普通に会えるようになったら、
わたしは一体何を考えるんだろうと思ったけれど、
自分でもわからない。
霊感おじさんに勤続25年おじさんの愚痴を聞かされてわたしはとりあえず笑う。
なんで知らない会社でこんなことしなきゃいけないんだろ。
わかんないけどとりあえず笑う。
わたしはどこに行っても下っ端だから。
今日は初めていつも優しいおじさんに名前を聞かれて名乗ってみたけれど、
「きっと次来たら忘れてますよ!
全然タイミーさんで良いですよ!」
と言ってまた笑う。
ライブハウスでもまち歩きのイベントでも、
わたしはいつも周りなんか見ていないのに、
その場にいる人達にいつの間にか覚えられていて、
そのうち話しかけられて仲良くなる人生だったから、
名前なんて呼ばれたら緊張してしまう。
わたしはなんかいつもいる人でいい。
とにかく気楽なのがいいのだ。
いつもの女の子とお喋りしながら仕事を終えて、
いつもの駅から帰る。
わたしの日常なんて本当につまらないなと思った。
今日も好きな人の工場の最寄り駅を通過するときに、
彼が乗ってこないか席から身を乗り出して確認してしまうけれど、
もちろん彼は今日も乗ってこない。
隣に座ったサラリーマンの匂いがすごくてわたしは気持ちが悪くなる。
マスクをしているのに吐きそうなくらい臭い。無理。
電車が空いたらすぐに別の席に避難した。
明日は本業を早退して、
また300キロ以上離れた街に遊びに行く。
遊びの予定があると、
気の進まないバイトをしなくていいのが良い。
家計は火の車だけど。
でももしこの予定が無かったら、
わたしはきっと明日はスーパーの品出しをしながら、
「好きな人の工場の近くのスーパーでも品出しの募集出ないかな、わたしできるんだけどな」
と考えるんだろう。いつもそうだから。
知らない街で好きなものを見ていたら、
わたしの頭には会えない好きな人のことを考える隙間なんていつも全く無くて、
わたしはずっと好奇心に満ち溢れて愛想笑いじゃない自然な笑顔でいられる。
いつもこうだったらいいのに。
どうして地元ではこんなふうにいられないんだろう。
わからないけれど、
とりあえず11月9日までは遊びの予定が続くので、
わたしはひとまず安心しているところだ。
その先のことはまだあまり考えたくない。